浜松ホトニクスは,半導体レーザー(LD)励起の固体レーザーでは世界最高出力となる,パルスエネルギー200ジュール(J)のレーザーを10ヘルツ(Hz)で照射できる平均2kWのレーザー出力を達成した(ニュースリリース)。
レーザフュージョンは,重水素と三重水素を入れた燃料カプセルに大出力のレーザを照射することで原子核同士が融合する反応。核融合反応によって発生した莫大なエネルギーを用いた発電実証は,カーボンニュートラルな社会に向けた次世代エネルギーとして期待されている。
米ローレンス・リバモア国立研究所にある国立点火施設(NIF)では,2メガジュール級の大出力レーザーを用い,2022年12月に世界で初めてレーザーフュージョンによる「点火(自己持続的な核融合反応)」が実証された。NIFにおけるレーザー照射は数時間に1回程度に限られるが,レーザーフュージョンの実用化にはレーザーの繰り返し出力が必要になる。
同社は2021年, 250Jのレーザーを0.2Hzの低い繰り返し数で出力するレーザー装置を開発。そして,2023年には,LDの励起パワーを調整しレーザー媒質の温度上昇を制御することで,100J×10Hzのレーザー出力を確認した。
今回,レーザーの高出力化のためにLDの励起パワーを1.5倍まで増強。その際に発生する発熱の影響を,独自の冷却構造を改良しヘリウムガスの流量を増やすことで軽減するとともに,レーザ装置全体の動作条件の最適化を行ない,レーザー媒質における特性の劣化を抑えた。この結果,パルスエネルギー200Jかつ繰り返し10Hzと平均出力2kWのレーザー出力に成功した。
今回,高いパルスエネルギーを繰り返し出力するレーザーの高出力化を実証したことで,レーザー装置のさらなる大出力化に向けた設計が可能になった。また,このレーザー装置によるレーザーを,中性子を安全に遮蔽できる同社のレーザー照射施設へ供給し,レーザーフュージョン研究にも応用することができる。
今後,レーザーフュージョンの実用化に向けて,1kJ×10Hzのレーザー出力を実現するレーザー技術の研究開発を加速させるという。また,この実験で明らかになった課題の解決と,1kJ級レーザーの開発を目指す国内外の研究機関との連携体制の構築および国家プロジェクトの立ち上げを目指すとしている。
また,この成果は,レーザー加工や宇宙デブリ除去,半導体露光用光源などの経済安全保障の観点からも,国家的重要技術であるとしている。
