京セラと東北大学は、レーザー光による局所的な熱処理手法「レーザーアニール」を用いて、シリコン光回路上に光アイソレーターを集積する技術を開発した(ニュースリリース)。

光回路と電子回路を半導体チップと同一パッケージに集積することで、電気信号の伝送距離を短くし、消費電力や信号損失を抑えるCPO(Co-Packaged Optics)の開発が世界的に加速している。光回路では、内部で反射した光がレーザー光源に入ると、通信品質の低下につながる。「光アイソレーター」は、この「戻り光」を抑制し通信を安定させる部品となっている。
CPOをはじめとする小型・高集積な光回路の実現に向けては、光アイソレーターをシリコン光回路上に直接作り込む技術が必要となる。光アイソレーターに使われる結晶材料の「磁気光学ガーネット」は、約600℃以上の熱処理が必要となる。しかし、シリコン光回路のチップ全体を高温で加熱すると、チップ上の電極や配線などの他素子に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、周囲の電極や配線に影響を与えず、磁気光学ガーネットだけを適切に熱処理する技術が課題となっていた。
研究グループは、この課題を解決するため、熱処理が必要な箇所にのみ局所的にレーザー光を当てて加熱する「レーザーアニール」プロセスによって、光アイソレーターをシリコン光回路に直接作りこむモノリシック集積技術の開発に成功。本試作品の動作を実証した。
磁気光学ガーネットが成膜された約700μm四方の光アイソレーター回路領域のみに、近赤外波長帯のレーザー光を照射。レーザー光が照射された領域は局所的に加熱され、磁気光学ガーネットは結晶化し、反射した光を抑えるために必要な特性を発現する。チップ全体を炉に入れて加熱する従来の手法と異なり、周囲の光回路や金属電極への熱的な影響を削減することができる。

この技術を用いて、光の干渉を利用する構造のデバイスを試作し、光アイソレーターとして動作することを実証実験した。実験では、信号として進む光(順方向伝搬)と、反射して光源に戻る光(逆方向伝搬)に相当する光出力を比較した。その結果、光通信で使われる波長域において13.6dBのアイソレーション比を確認し、戻り光を約20分の1に低減できることを確認した。また、レーザーを照射した部分の磁気光学ガーネットが、シリコン導波路上で良好に結晶化していることも電子顕微鏡で確認した。
今後は、これら技術の実用化に向けて、さらなる低損失と高効率、量産のための生産性向上を目指すという。





