大阪大学とアルバックは、窒化インジウムガリウム(InGaN)発光ダイオード(LED)に周期的なナノ構造「メタサーフェス」を直接結合することで、高効率かつ超小型の円偏光デバイスが実現可能であることを明らかにした(ニュースリリース)。

偏光を制御したデバイスは、新たな光応用の可能性を広げる素子として、映像・通信・計測・加工・光記録に至るまで幅広い分野への応用が期待されている。なかでも円偏光は、信号を受け取る側の素子傾斜などでは偏光特性が変化しない、という大きな特長があるため、様々な次世代の光学応用に向けて高い注目を集めている。これまでに提案されてきた単一素子として円偏光を発生できる円偏光LEDは、「高い円偏光度」と「高い発光効率(外部量子効率)」の両立が難しく、さらにデバイスの耐久性や量産性にも課題があった。
研究グループでは、電気→光の変換効率が極めて高いInGaN系LEDの光出射面にメタサーフェスを直接積層した一体型デバイスを作製する、という新しいアプローチを提案・実証した。メタサーフェスは、ナノメートルサイズの構造体(ナノピラー)を人工的に周期配置した表面構造であり、光の進み方やその性質(位相・偏光)を制御することができる。この技術を応用することで、LEDから射出される無偏光の光から、特定の円偏光(右回りまたは左回り)成分のみを選択的に透過させることが可能となり、最適なメタサーフェス構造の設計によって、高い量子効率と高い円偏光度の両立が原理上可能となることが明らかになった。この研究において提案した構造では、円偏光度0.87、透過効率約35%(理論上限50%)を実現することができる。
さらに今回の研究では、高い透明性と高い屈折率を必要とするメタサーフェス材料として、LEDと同じ材料系である窒化ガリウム(GaN)を選定した。これにより、既存のLED量産技術(半導体結晶成長、デバイスプロセス等)をそのままメタサーフェスの作製プロセスにも活用することが可能。通常は無偏光から円偏光を得るための変換には、2つの光学素子の組み合わせ(直線偏光子+1/4波長板)が必要だが、本研究では、ナノピラーの設計を最適化することで、1層のメタサーフェス構造を介すだけで円偏光が選択的に得られることを見出した。これにより、デバイスの超小型化が可能になり、今後の高集積デバイスへの応用が期待できるという。今回の研究の円偏光LEDは、動作環境に対して安定な無機半導体材料のみで構成されており、負荷がかかるような特殊な電流駆動条件も必要としないことから、高いデバイス耐久性も実現できる。
この研究成果は、AR(拡張現実)、3Dディスプレイ、量子情報通信、光セキュリティなど、次世代の光技術の基盤となる「超小型・高効率な円偏光源」の実現に大きく貢献するという。超小型・高効率な円偏光LEDは、ウェアラブル端末や高精細ディスプレイの実現を加速するとともに、偏光多重通信やバイオセンシングなど、光の偏光状態を利用した新しい応用分野にも展開が期待される。InGaNおよびGaNで構成された本デバイス構造は、既存のLED量産技術と親和性が高く、耐久性・信頼性にも優れており、将来的な大規模生産やコストダウンも見込まれるとしている。



