広島大ら、ブラックホールに落ち込むプラズマ構造を解明

著者: オプトロニクス 編集部

広島大学、大阪大学、JAXA宇宙科学研究所、愛媛大学は、気球望遠鏡XL-Caliburを用いた新たな観測により、ブラックホール周辺の極限的な環境を明らかにした(ニュースリリース)。

ブラックホールに降着し吸い込まれる物質は、強い重力によって非常に高温に熱せられ、X線で明るく輝いている。そのため、X線観測によって、ブラックホール近傍での降着物質の物理状態を明らかにすることができれば、中心に存在するブラックホール自身の物理量や、強い重力場における一般・特殊相対論的な効果も観測することができると期待されている。

しかし、これまでの時間変動やエネルギーの観測だけでは、降着物質がどのような状態にあるのか長年にわたって議論が平行線をたどっていた。

偏光観測は、画像、時間変動、エネルギーの測定とは異なり、高エネルギー粒子が放射する光子の偏光情報から、物質から直接届いたのか、どこかで反射・散乱されてきたのかという幾何構造を推定することができる。

電波や可視光では一般的な手法だが、X線やガンマ線の帯域では技術的な困難から、これまでに硬X線の帯域で偏光情報を取得できたのは、実施したPoGO+気球実験だけだった。

研究グループは、気球望遠鏡XL-Caliburを用いた新たな観測により、ブラックホール周辺の極限的な環境を明らかにした。

観測対象は、地球から約7,000光年の距離にあるはくちょう座X-1(Cyg X-1)。ブラックホールの質量は太陽の約 21倍。ブラックホールの周囲には、落ち込む物質と噴き出す物質が、①降着円盤②コロナプラズマ③プラズマジェットの構成要素を形成していると考えられている。

XL-Caliburの観測は、特にコロナプラズマの形状と位置、起源に強い制約を与えている。以前の PoGO+の観測では、硬X線の偏光が微弱であることしか分かっていなかったが、今回のXL-Caliburでは感度が約20倍も向上したことにより、偏光度がおよそ5.0%であることが測定することができた。

この結果、直径125kmのブラックホールの中心から2000km以内で明るく輝くコロナが、ブラックホールから数十億kmにわたって噴出する巨大なプラズマジェットと垂直方向に整列していることが分かった。

今回のXL-Calibur実験による観測結果から、広がったコロナの形状は円盤に沿った平べったい構造であることを明らかにすることができた。

研究グループは、今後は、中心に存在するブラックホールの特性やブラックホールが及ぼす相対論的な効果などの理解が進むと期待されるとしている。

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