新潟大学の研究グループは,蛍光分光法を用いた無花粉スギの簡易識別技術を開発した(ニュースリリース)。
無花粉スギの花粉を飛ばさない性質は,雄性不稔遺伝子と呼ばれる1つの潜性遺伝子で決まる。そのため,両親から雄性不稔遺伝子を受け継いだスギ(aa)は無花粉となるが,雄性不稔遺伝子と花粉を飛ばすタイプの遺伝子をそれぞれ受け継いだスギ(Aa)は,雄性不稔遺伝子を持つにも関わらず,花粉を飛ばす。
無花粉スギ実生苗の生産現場では,強制的に雄花を着生させて無花粉スギか花粉の出るスギかの識別を目視で行なっているため,より簡便かつ迅速に無花粉スギを判別する技術の確立が必要とされた。そこで研究グループは,スギ花粉が蛍光反応を示す先行研究から着想を得て,蛍光分光法を用いた無花粉スギの判別技術の確立を目指した。
この研究では,雄性不稔スギと可稔スギの雄花断面の EEM を測定し,得られた分光データをもとに分類モデルを作成した。その結果,両者で蛍光反応の違いが顕著に現れた波長を選択して分類モデルを構築した場合に,最も高精度な判別を実現できたという。
スギ雄花を半分に分割し,断面の蛍光特性をEEMによって取得。EEMの結果から,複数の波長セットを作成して雄性不稔と可稔の分類モデルを構築し,判別精度を比較した。主成分分析を実施したのちにサポートベクトルマシンで分類モデルを作成した結果,同期蛍光スペクトルを二次微分したスペクトルで判別精度が最も高くなった。同期蛍光スペクトルは雄性不稔と可稔の蛍光ピークの違いを効率的に取得でき,さらに二次微分をすることで各ピークが明瞭になったため雄性不稔と可稔のスペクトルの違いがより明確になり,高精度な結果を得られたと考えられる。
さらに,このスペクトルを用いてデータ分割解析を行ない,未知のサンプルに対する精度を検証した。その結果,不稔の適合率が 100%を達成した。これは不稔と予測された個体のうち実際に不稔であった個体の割合を表し,苗木選別現場で重視される指標。この研究の結果から,蛍光分光法を用いて雄性不稔個体と可稔個体の蛍光特性の違いに着目することで,両者を高精度に分類可能であることが明らかになった。
今後は精度検証を行なうとともに,モデルの種類として,この研究と同様の古典的な機械学習の手法に加えて,深層学習などより高度なモデルを検証。さらに,蛍光分光法の一種である蛍光画像を用いた解析などを合わせて行なうことで,より実用化に適した判別手法を探索するという。そして,その成果をもとに,雄花を利用した無花粉スギの新たな簡易判定法の実用化を目指すとしている。




