公大と兵県大、有機ホウ素錯体の蛍光色変化を超高圧下で観測

大阪公立大学と兵庫県立大学は、分子内π-π相互作用が、圧力に対する蛍光色の可逆的変化(PFC)に与える影響を調べるため、シクロファン部位をもつ有機ホウ素錯体pCPHとpCP-iPrの単結晶をダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いて超高圧に加圧、PFC挙動を解析し、その圧力依存性の発現機構は全く異なることを解明した(ニュースリリース)。

(図)今回の研究で合成した2種類の有機ホウ素錯体とそれらの結晶への加圧による蛍光挙動の変化

PFCは比較的古くから知られているが、圧力センサーや圧力可視化などの応用面での発展性も大きいことから、PFC材料の開発やその発現機構の解明などの基礎面で、現在も大きな注目を集めている。PFC挙動を示す従来のπ共役系有機分子は、圧力に対する分子間のπ-π相互作用の変化が蛍光色変化の主な要因だった。

研究グループは、分子内のπ-π相互作用がPFCに及ぼす影響を調べるため、二階建て分子構造を有する[2.2]パラシクロファン部位を有する置換有機ホウ素錯体のPFC挙動を、DACを用いて調べた。

まず、pCP-HおよびpCP-iPrの単結晶の蛍光の圧力応答性を調べた。いずれの結晶も常圧では緑色蛍光を示すが、昇圧するにつれて蛍光色は黄緑→黄→オレンジと変化し、最終的に約8GPaでは赤色の蛍光を示した。昇圧を解くにつれて結晶の蛍光色は徐々に黄緑に戻り、PFC挙動が確認された。

(図)有機ホウ素錯体pCP-HおよびpCP-iPrの結晶のPFC挙動

昇圧に伴いpCP-Hはより敏感に発光エネルギーが変化したが、5GPa以上の領域ではほとんど変化がなかった。これとは対象的に、pCPiPrは1GPaから8GPaの領域まで直線的で、しかも圧力により鈍感な挙動を示した。

この挙動の違いに対し、結晶内でどのような変化が起きているかを、X線結晶構造解析により評価した。その結果、pCP-Hでは、π-π相互作用を示す分子同士の距離が昇圧により3.72Åから3.50Åまで短くなっていたが、シクロファン部位のベンゼン環同士の距離2.96Åはほぼ変わらず、分子内相互作用は変化していなかった。

一方、pCP-iPrは分子間距離が昇圧により4.68Åから4.17Åまで変化するのと同時に、シクロファン部位のベンゼン環同士の距離も2.97Åから2.90Åまで縮んでおり、分子内相互作用も大幅に変化していた。

量子化学計算による評価の結果、分子間のπ-π相互作用の変化は蛍光色に対する変化の主要因ではなく、シクロファン部位の伸縮、つまり分子内のπ-π相互作用の効果が支配的であることも明らかになった。

研究グループは、これにより、単分子で機能するPFC材料設計への貢献が期待されるとしている。

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