名古屋大学の研究グループは、高価なキラル配位子X*の使用量を最小限に抑えることができる理想的なデザインの鉄(III)光触媒の開発に成功した(ニュースリリース)。

金属光触媒は、非金属光触媒に比べて耐久性に優れている点や、配位子を変えるだけでその機能を調節できる利便性から、有機合成化学の分野で広く用いられてきた。しかし、こうした光触媒に用いられている金属の多くはルテニウムやイリジウムなどのレアメタルであり、コモンメタルを用いる代替法の開発に注目が集まっている。
今回、研究グループは先行研究で発見した鉄(III)光触媒FeX*3を改良することで、安価で高い性能を有する触媒FeX*Yの開発に成功した。先行研究では、同じ高価なキラル配位子X*が3つ結合した触媒を用いていた。
今回の研究では、2種類の配位子X*と安価なアキラル二座配位子(Y)を組み合わせた触媒を用いることで、X*の使用量を先行研究の1/3に削減することに成功した。成功の鍵は、触媒 FeX*Yを用いて、光照射下、基質Sと反応させることで、活性中間体[S]•+[X*]–と鉄(II)塩 FeYを選択的に生成させることができるようになった点となっている。
それにより、X*の使用量を最小限に抑えながらも反応を立体選択的に進行させられるようになった。さらに、Yの構造を検討することで、触媒活性の面においても先行研究を上回る性能を有する触媒の開発に成功した。

また、開発した触媒を用いた選択的な反応を利用することで、生物活性天然物の不斉全合成にも成功した。薬用植物から単離されたHeitziamide Aは呼吸バースト阻害活性を示す有用な天然物として、人工的に合成する方法がこれまでに報告されている。
しかし、薬理活性の解明につながる(+)-Heitziamide Aと(–)-Heitziamide Aの作り分けに成功した例はなかった。今回、鉄(III)光触媒と青色光を用いた6員環形成反応を利用することで、生成物として想定可能な8種類の異性体の中から1種類の異性体を選択的に得ることに成功した。
さらに、得られた生成物に化学修飾を行なうことで世界初となる(+)-Heitziamide Aの不斉全合成を達成した。触媒の構造を一部変えることで、(–)-Heitziamide Aの合成も可能であり、研究により両者の作り分けが可能となった。
研究グループは、今回の研究は、豊富な資源である鉄とクリーンなエネルギーである光を掛け合わせた合成法の開発であり、科学技術の持続可能な発展につながるとしている。



