NECら,高速データ通信と鍵生成との共存に成功

著者: 梅村 舞香

日本電気(NEC),東芝,情報通信研究機構(NICT)は,量子暗号通信分野において,量子鍵配送(QKD)信号を,次世代情報通信基盤として期待されるIOWNのオール光ネットワーク向けのシステム環境で多重伝送し,鍵生成を行なう実証実験に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

QKDネットワークの構築に向け,世界各地でトライアル環境の整備・提供・運用試験が進められている。これらのネットワークは,鍵生成速度を最大化するため,単一光子レベルのQKD信号を理想的な条件で伝送する専用のダークファイバを利用し,データ通信用光ネットワークとは異なる運用ルールで管理される独自のインフラとして構築されてきた。

しかし,専用インフラの場合,ダークファイバの確保や特殊な管理・保守手順を必要とするため導入・運用コストが高く,ネットワークのさらなる規模拡大や,ユーザ向けサービスの広域にわたる普及の制約となる可能性がある。

今回の実証は,通信キャリアが運用する基幹系光ネットワーク環境を想定して実施した。IOWN Open APNの構成機器としてNECが提供するオープン光トランスポート装置「SpectralWave WXシリーズ」の光伝送装置を伝送路に接続して,通信キャリアの基幹系光ネットワークへの適用が想定される波長帯であるC+Lバンド対応ROADMシステムをNICT量子ICT協創センターが提供する試験環境に構築し,データ通信用の大容量光信号と2つの異なる方式のQKD信号(BB84,CV)を同一伝送区間に多重化した共存伝送を実施した。

2つの異なるQKD信号と,それに合わせて送受信される制御用光信号を,光伝搬方向が異なる2心の光ファイバそれぞれに収容した。

さらに,通信キャリアの基幹系光ネットワークで実際に使用される環境を模擬するため,同一のファイバにおいて,CバンドおよびLバンドの波長帯全域に光出力+17dBmで,伝送速度47.2Tb/sに相当するダミーのデータ通信用光信号とQKD信号を多重化し,それぞれの信号の波長が干渉し合わないように波長を割り当てる制御をして,25kmの伝送を行なった。

上記の条件下で,8時間連続で2つの異なるQKD方式による同時鍵生成に成功した。また,CバンドおよびLバンドの帯域内に配置した1波長あたりの伝送速度400Gb/sおよび800Gb/sの高速データ通信用の実信号をエラーフリーで伝送しながら,単一光子レベルのQKD信号と共存できることを確認した。

研究グループは,今後,高信頼かつ広域なQKDネットワークが低コストに導入できることが期待される成果だとしている。

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