東京大学の研究グループは,半導体基板用ガラスへの極微細レーザー穴あけ加工技術を開発した(ニュースリリース)。
露光技術の進歩に伴い,半導体チップは微細化するとともに大面積化も進んでいる。それとともに,半導体チップを実装する回路基板の配線も微細化と大面積化が求められている。
さらにはbeyond 5Gや6Gの通信のために高周波化も重要となってきている。従来回路基板には樹脂が用いられていたが,これらの要求に応えるために,基板の材料が樹脂からガラスへと移行するとされている。
ガラスは高周波特性が良く,大面積で平坦,そしてシリコンと熱特性を合わせることができるといった特徴がある。回路基板には表と裏をつなぐ配線のために多数の貫通穴をあける必要があるが,高密度の配線のためには微細な穴が必要となる。
ところがガラスは脆性材料であるため,極端に小さな径で深い穴を真っ直ぐ精密にあけることは,ひび割れなどの問題があり難しい。ガラスの微細穴あけには大きく分けて,化学的なエッチングを使う手法とレーザーで穴あけをする手法があるが,双方利点と欠点があり,いずれも確立した技術とはなっていない。そこで現在世界中でガラスへの微細かつ高アスペクト比の穴あけ加工技術の研究開発が行なわれている。
今回,研究グループは,半導体基板として電気的・熱的特性が優れているEN-A1ガラスに対してレーザー加工のみで微細貫通穴加工を行なった。ガラス基板には,次世代の半導体製造「後工程」に用いられる候補材料の一つであるAGCの「EN-A1」を用いた。
超短パルスの深紫外レーザーを用いることで,ガラスに直径10μm以下の穴を貫通させることができた。アスペクト比にするとおよそ20程度。これまで,酸を使うエッチングでは高アスペクト比を実現することが困難だったが,深紫外レーザーによる直接加工ではクラックがなく,高アスペクト比を実現できることが分かった。この加工は化学処理を一切伴わないため廃液処理などの環境負荷も低減できる。
これは次世代半導体製造の後工程において基板のコア材やインターポーザをガラスへと移行する際に貫通穴をあける技術として,重要なマイルストーンとなる。
研究グループは,この技術は今後半導体のさらなる微細化や複雑化するチップレット技術において貢献することが期待されるとしている。