理研ら,民間と開発のキューブサットで中性子星観測

理化学研究所(理研),京都大学,千葉大学,広島大学らは,キューブサット(CubeSat)X線衛星NinjaSat(ニンジャサット)を用いて,決まった時間間隔で規則正しく爆発を起こす奇妙な中性子星(クロックバースター)を観測し,その特徴を明らかにした(ニュースリリース)。

NinjaSatは,リトアニアKongsberg NanoAvionicsにより製作され,三井物産エアロスペース経由で理研が調達した6Uキューブサット(30cm×20cm×10cm)。搭載された小型ガスX線検出器と放射線帯モニターは,理研により設計,製作,試験され,2023年11月11日に高度530kmの地球低軌道に打ち上げられた。

NinjaSatの科学観測が始まる2日前(2024年2月21日),新天体SRGA J1444が発見された。研究グループはこの発見を受け,迅速に観測プランを変更できる超小型衛星の長所を活かし,急遽SRGA J1444の長期観測を行なうことにした。

この新天体は,発見されてすぐに,X線で短時間(数十秒)だけ突然明るくなるX線バーストが多数観測され,その発生間隔が約1.7時間と規則正しいことから,恒星と中性子星が連星系を成すもののうち非常にまれな「クロックバースター」であることが示唆された。

25日間もの長期にわたる占有観測から,SRGA J1444からの定常X線放射は,時間とともに徐々に暗くなっていくことが分かった。また,暗くなるに従ってX線バーストの発生間隔が,当初報告された1.7時間から,徐々に長くなっていくことも観測された。

SRGA J1444の定常X線放射の明るさは,連星系を成す恒星から中性子星に降り積もる物質の量を反映している。X線で暗くなるということは,隣の星から中性子星に降り積もる物質が減り,X線バーストを発生させるための燃料がたまりにくくなることを意味する。

そのため,爆発するまで時間がかかり,X線バーストが起きる間隔が,徐々に長くなると考えられるという。このX線の明るさとX線バーストの発生間隔の関係から,SRGA J1444は太陽の2倍以上の質量を持ち,限界質量に近い中性子星であることが示唆された。さらに,連星系を成している恒星は水素の外層が大きく削り取られた過去がある,かなり特殊な系であることも分かった。

この成果は,理研と民間宇宙企業が製作した世界初の超小型汎用X線衛星を用い,X線天体の指向観測による科学成果を実現した最初の例。研究グループは,大型の科学衛星とは異なる宇宙観測手段は,今後も宇宙物理学・天文学に貢献することが期待されるとしている。

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