JAEAら,α線がん治療薬の有効性を迅速に見える化

日本原子力研究開発機構(JAEA),量子科学技術研究開発機構(QST)は,ピンポイントでがんを狙うα線がん治療薬の治療効果を決定するα線放出核種の化学形と放射能の迅速・同時分析システム「NuS-Alpha(ニュースアルファ)」を開発した(ニュースリリース)。

α線は体内で細胞数個分程度の距離しか進ま,薬として用いると,がん細胞をピンポイントで死滅させた上で,がん周辺の正常組織への影響を最小限に抑えることができることから,α線内用療法が注目されている。

この治療には,α線を放出する211At(アスタチン)や225Ac(アクチニウム)等のα線放出核種が検討されている。これらはいずれも人工的に製造され,がんに集積する化学物質と組み合わせて薬剤化して投与する。

ところが,211Atは半減期が7時間程度と短いため,化学形と放射能を迅速かつ正確に評価する分析手法が必要。しかし,従来技術は,X線等の妨害を受けるために一部の化学形が分析できない,分析に時間を要する問題があった。

さらに,作業工程が多く効率が悪く,広い作業スペースを要し,人や物の移動が多くなる事で作業者の被ばくリスクも増加する。

この研究では,薄層クロマトグラフィー(TLC)とα線シンチレーター,高感度CCD/CMOSカメラを組み合わせた新型分析装置「α線内用療法薬分析システム」を開発した。この分析システムでは,TLCを用いて薬剤中の211Atを化学形ごとに分離し,試料(TLC試料)として使用する。

TLC試料から放出されたα線はシンチレーターによって可視光に変換され,その光をカメラでリアルタイムに記録する。このプロセスによりα線を視覚的に捉え,化学形と放射能を同時に解析することが可能となるという。

TLC試料をセットするだけで,迅速かつ同時に化学形と放射能を測定できる。さらに適用範囲を拡張する改良を重ねることでβ線核種にも対応。また,吸排気システムでカメラの急激な温度変化を抑え,画像の劣化を防ぐ機能を整備して安全性を向上した。

3Dプリンターを活用して筐体の金属溶接を削減することで製造コストも抑え,高感度CCDカメラとコストを抑えたCMOSカメラの二種類をオプションとして選択可能とした。この製品は,臨床現場,放射線産業および環境分野などにも貢献できる装置として,2025年3月に明昌機工より販売が開始されている。

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