北海道大学の研究グループは,乳がん等の検出のための蛍光プローブ(機能性試薬)を開発した(ニュースリリース)。
がんを早期かつ正確に検出することは,患者の生存率や治療効果を高めるために非常に重要。広く使用されている画像診断技術である磁気共鳴画像法(MRI)やX線コンピュータ断層撮影(CT)は,腫瘍の位置を特定するのに有効だが,腫瘍に関する特定の生体分子情報を提供することはできない。
従来の可視光や近赤外線(NIR)による蛍光イメージングは,解像度や組織への浸透性に限界がある。標的分子プローブを用いた蛍光イメージングは,非侵襲的ながん検出や手術中のリアルタイムなガイドとして有望な手法として注目されている。
短波赤外線(SWIR)領域でのイメージングは,より深い組織への浸透や高いコントラストといった優れた光学特性により,関心を集めている。
一方で,小分子薬剤は,抗体ベースのシステムに比べて高い結合特異性や優れた薬物動態など,プローブ開発において独自の利点を持っている。中でも,FDA承認薬であり,エストロゲン受容体陽性(ER+)乳がんに広く使用されているタモキシフェンは,イメージングプローブ設計において臨床的に有用な標的分子として注目されている。
標的型がん検出⽤SWIR蛍光プローブの開発にあたり,FDA承認のエストロゲン受容体標的薬であるタモキシフェンを,近⾚外蛍光プローブICGなどの蛍光⾊素に結合させてICG-TAMを合成した。
しかし,励起波⻑が800nm未満のため,深部組織への浸透性が低く,近⾚外領域での⾃家蛍光の影響により腫瘍の境界を⾒分けにくくなる。
シアニン⾊素のポリメチン鎖に⼆重結合を⼀追加すると,吸収・発光波⻑が約100 nm⻑波⻑側にシフトすることが知られている。この性質を利⽤し,π共役拡張の⼿法でポリメチン鎖に⼀つまたは⼆つの⼆重結合を加え,ICG-C9-TAMとICG-C11TAMを開発した。
その結果,ICG-TAMは827 nm(近⾚外領域)に最⼤発光波⻑を⽰す⼀⽅で,π共役を拡張した類縁体であるICG-C9-TAM及びICG-C11-TAM は,それぞれ947nm及び1056 nm(短波⾚外領域)に最⼤発光波⻑を⽰すことを確認した。
今回,乳がんのマウスを用いたSWIR蛍光イメージングにより,蛍光プローブが発するSWIR蛍光を通じてがんを診断できることを示した。 研究グループはこの成果を,生物医学応用にとって非常に重要な基盤技術だとしている。
