高知大ら,生体に適用可能な細胞膜プローブを開発

高知大学と愛媛大学は,新しい蛍光性細胞膜プローブ「dSQ12AQ」を開発した(ニュースリリース)。

細胞の形や動きを観察することは,がんの転移や免疫応答,幹細胞の分化などの理解に重要。そのために使われる蛍光イメージングでは,特に細胞膜を選択的に染める細胞膜プローブが欠かせない。

しかし従来のプローブは培養細胞向けに設計されており,生体内への投与には適していなかった。特に水に溶けにくく,マウスへの静脈投与が困難で,十分な濃度を体内で確保できないという課題があった。その結果,光の散乱が強い骨髄や皮膚などでの観察が制約されており,これが生体内での細胞形態観察の大きなボトルネックになっていた。

研究グループは,生体適用可能な細胞膜プローブを開発するため,既存のプローブdSQ12Sに着目した。dSQ12Sは,高い蛍光輝度を示すスクアライン発色団を骨格とし,培養細胞の膜を鮮明に可視化できる優れた特性を有している。

しかし,水中での分散性が著しく低く,血中でも容易に沈殿してしまうため,生体への投与には適用できなかった。dSQ12Sは2つの双性イオン型アンカー分子を有し,これによって細胞膜選択性を発揮するが,この構造が水中分散性の低さの一因と考えられた。

そこで研究グループは,双性イオン型アンカーをアニオン性アンカーに置換する新たな分子設計を行ない,水中分散性の改善を図った。その結果,得られた新規プローブは,10mg/mLを超える高濃度で安定して水中分散できた。これは生体への安全な静脈投与に寄与する。

さらに,dSQ12AQはdSQ12Sと同様に蛍光OFF-ON性を保持していることが確認された。このプローブはアンカー分子の構造に由来する両親媒性により,水中では凝集体を形成し,蛍光が消失したOFF状態となる。

一方,脂質膜の存在下では,凝集状態を解消し,脂質膜に挿入されることで蛍光性を回復するON状態となる。この性質により,洗浄操作を行なわずに細胞膜を選択的かつ高感度に可視化できることが,培養細胞を用いた実験で確認された。

このプローブ(dSQ12AQ)を用いて,最先端の二光子励起蛍光顕微鏡による観察を行なったところ,光散乱性が高く従来観察が困難であった骨髄組織において,細胞膜の輪郭や,骨髄内血管を流れる血球の形態・動態を明瞭に描出することに成功した。

加えて,発色団をスクアラインからカルボシアニン(Cy5)に置き換えた場合でも同様の水分散性と生体適用性が維持されることが確認され,アンカー分子設計の汎用性が示唆された。

研究グループは,今後は多様な発色団を用いた生体イメージングプローブの開発へ応用可能であるとしている。

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