名古屋大学と岐阜大学は,脂肪滴に特異的に局在する環境応答型蛍光プローブを開発し,脂質の加水分解の進行度を蛍光寿命の違いとして可視化する新たな解析技術を確立した(ニュースリリース)。
蛍光イメージングは脂肪滴動態の解析において強力な手法であり,脂肪滴を染色する蛍光プローブはこれまでも多く開発されてきた。しかし,これらは主として脂肪滴の大きさや挙動を可視化するにとどまり,脂肪滴内部における脂質の代謝状態をリアルタイムに捉えることは困難だった。
今回研究グループは,この知見を基盤に,新しい脂肪滴蛍光プローブ「LipiPB Red」を開発した。この特性について評価するため,まずTAGであるトリオレイン(TO)とDAGであるジオレイン(DO)の構成割合を変えた人工脂肪滴を作製し,それぞれについて蛍光寿命イメージング顕微鏡(FLIM)を用いて解析した。
その結果,DAGの比率が高くなるほどプローブの蛍光寿命が短くなることが分かった。次に,LipiPB Redによってさまざまな細胞種に含まれる脂肪滴を染色し,その様子をFLIMによって観察した。その結果,肝臓がん細胞株であるHepG2細胞とHuh-7細胞中に存在する脂肪滴では蛍光寿命が一様ではなく,同じ細胞内であっても脂質組成に不均一性があることを発見した。
この不均一性は肝臓がん細胞特有の現象であり,HeLa細胞やCOS-7細胞,脂肪細胞などでは認められなかった。さらに,TAGからDAGへの加水分解を担うリパーゼであるATGLの活性を阻害したり,siRNAによってATGLの発現を抑制したりすると,この不均一性は消失した。
また,LipiPB Redで染色した脂肪細胞に対して脂肪分解を促進するフォルスコリンを投与し,その過程をFLIMで追跡したところ,脂肪滴サイズの縮小とともに,一様だった蛍光寿命が経時的に不均一になっていく様子が観察された。
一方,脂肪滴の分解には,上記のようにTAGを段階的に加水分解するリポリシスに加え,脂肪滴を選択的に分解するリポファジーとよばれるオートファジー経路も存在する。オートファジー経路を可視化する分子マーカーであるRFP-GFP-LC3を用いて同時に観察したところ,脂肪滴がオートファゴソームに取り込まれる前の段階ですでにTAGの分解が進行していることが判明した。
研究グループは,この成果は,脂質代謝異常に起因する疾患の理解や診断・治療法の開発に向けても大きく貢献するものと期待されるとしている。




