神大ら,光ファイバーを生体に刺入し内部細胞を撮像

神戸大学,理化学研究所(理研),甲南大学は,がん細胞を生体内の深部までリアルタイムに可視化することに成功した(ニュースリリース)。

がんの内部は,様々な特徴を持ったがん細胞や免疫細胞,線維芽細胞など多様な細胞が不均一に入り乱れている。このような内部環境は,がん治療を阻む大きな要因とされており,がん治療開発において重要な課題であることが広く認知されている。

しかし,従来の解析技術では,生体深部のがん細胞を解析することは困難であり,腫瘍内部の環境を考慮したがん治療の開発には,新しい技術の開発が必要だった。

研究グループは,がんの生体イメージング用に改良を施した独自の顕微内視鏡と,理研が開発したFucciシステム(Fucci(SA)5)を導入したがん移植モデルマウスを用いて,がん深部に存在するがん細胞を生体内でリアルタイムに解析できる技術の開発に成功した。

この技術は,直径0.35mmの光ファイバーを生体組織に刺入することで,内視鏡のように内部の細胞を撮像することを特徴とする。したがって,組織深部まで細胞の撮像が可能であり,今回の研究では直径1 cmにも達する大きさのがんおいても,端から端までがん細胞を可視化することに成功している。

また,生体に対するダメージが非常に低く,同一個体で長期にわたり複数回の解析が可能。さらに,この技術は細胞を解析するために必要な分解能を有しているだけでなく,マルチカラーレーザーシステムを搭載しているため,複数種類の細胞を同時に解析することも可能となっている。

さらに,この研究ではハード面の開発に加えて,ソフト面での開発も実施した。今回の研究では撮像した動画データを顕微鏡像のように二次元画像として生成する技術を開発した。この技術を適用することで,生体においても摘出標本の一般的な顕微鏡像と同等のイメージングデータを取得することが可能であり,容易に細胞の空間情報を理解することができるという。

今回の研究では開発した技術を用いて,様々な抗がん剤に対する細胞応答を生体内で数週間に渡って解析することにも成功している。この実験では,古典的な抗がん剤の投薬によって,一部のがん細胞が多倍体化することを明らかにした。また,がん細胞の多倍体化は血管の密度が高い場所において,優先的に起こることも明らかにしている。

研究グループは,今後の研究開発により,基礎研究や創薬研究だけでなく,新しいがん診断法や治療効果の評価法など医療の発展にも貢献することが期待されるとしている。 

キーワード:

関連記事

  • OKI、ライテラ、慶大、空孔コア光ファイバーで広帯域・1芯双方向伝送に成功

    沖電気工業(OKI)、ライテラジャパン、および慶應義塾は、空孔コア光ファイバー(HCF)を用いた次世代光回線の実証において、1.26μmから1.58μmの広帯域波長多重信号による1芯双方向伝送に世界で初めて成功した(ニュ…

    2026.05.27
  • 徳島大と岐阜大、420GHz超で初の100Gb/s級無線通信を実証

    徳島大学と岐阜大学工学部の研究グループは、光ファイバー接続マイクロ光コムを用いたテラヘルツ波生成と多値変調技術を組み合わせたマイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信システムを開発した(ニュースリリース)。 次世代移動通信システ…

    2026.05.22
  • 慶應大、プラスチック光ファイバーで212.5Gb/sの50m伝送に成功

    慶應義塾大学の研究グループは、データセンター向け短距離光通信の高速化に貢献する屈折率分布型プラスチック光ファイバー(GI POF)を開発し、次世代の1レーン212.5Gbps(ギガビット/秒)の50m伝送の実証に成功した…

    2026.05.07
  • 【GW読書におすすめ】身近な光技術を感じる書籍「ひも解くひかり 身近なひかり」

    連休中、少しゆっくりとした時間を過ごしてみてはいかがだろうか。青い空、鏡に映る自分、写真、通信、生命の営み――私たちの身の回りには、あらゆるところに光がある。日常では当たり前に受け止めている現象も、その背後には反射、屈折…

    2026.05.02
  • 反射型光ファイバー分布計測で6 mm分解能、芝浦工大と横浜国大が実証

    芝浦工業大学と横浜国立大学の研究チームは、光ファイバーに沿った温度やひずみの分布を測定する反射型のブリルアン光相関領域反射計(BOCDR)において、6 mmの空間分解能を実証した(ニュースリリース)。反射型ブリルアン計測…

    2026.04.17

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア