NICTら,次世代通信に1550nm帯VCSELを開発

情報通信研究機構(NICT)とソニーセミコンダクタソリューションズは,光ファイバ通信に使用できる実用的な面発光レーザー(VCSEL)の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

低消費電力/大容量のデータ伝送において,光通信ではVCSELが注目されている。しかし,VCSELは,波長850nmや940nmの近赤外領域での使用が一般的で,既存の光ファイバ通信で使用される1,550nmの長波長での開発には技術的な課題がある。

長波長のVCSELは,短波長のものに比べて材料の選択や構造設計が複雑で,VCSELの高出力化と高効率化を実現するためには,1,550nmで高効率に発光する工夫が求められる。今回,研究グループは,量子ドットを発光材料として利用し,1,550nm帯用VCSELの電流駆動に世界で初めて成功した。

要素技術の一つ目は,NICTが開発した分子線エピタキシーを用いた高精度な化合物半導体結晶成長技術。VCSELの作製には,光の強度を増加させるため高反射率の半導体多層膜の結晶成長が必要となるが,1,550nm帯用VCSELでは結晶成長できる材料の組合せが限られているため,その作製が難しい。

今回,“結晶成長における材料の比率を厳密に制御することにより,多層膜を精度よく結晶成長する技術”を開発。1,550nm帯でも99%以上の高反射率半導体多層膜を実現した。また, “量子ドットの周りに発生する結晶歪を正確に打ち消す歪補償技術”をVCSEL作製に適用し,発光材料である量子ドットの密度を飛躍的に高めたという。

二つ目は,ソニーのトンネル接合を用いた高効率な電流注入を実現するデバイス設計及びデバイスプロセス技術。VCSELは半導体ウエハーの上面に対して垂直に光が出射されるため,量子ドットが発光しても電極が光を遮ってしまう。光を外に取り出すために電流がうまく流れていく構造(トンネル接合)を設計し,高精度なデバイスプロセスを用いることでこれを実現した。

これらの開発技術を組み合わせることで,13mAという低しきい値電流で1,550nm帯の量子ドットを発光材料に用いたVCSELのレーザー発振に成功した。また,偏光のゆらぎがなくなり,出力が安定することも明らかになったという。

量子ドットを発光材料として用いることで,温度安定性に優れたVCSELの実現が可能。また,VCSELは大量生産可能な構造であることから,研究グループは,光通信波長帯レーザの高性能化,低コスト化,集積化による高出力化が期待できるとしている。

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