名大,金・白金含む王冠状金属ナノ集合体を精密合成

名古屋大学の研究グループは,金と白金元素を含む王冠状金属ナノ集合体(金属ナノクラスター)の精密合成に成功した(ニュースリリース)。

金属ナノクラスターは原子数個から数百個から成るナノサイズの集合体であり,一般的な金属材料とは異なる光学特性や触媒活性を示すことから近年注目を集めている。

しかしながら,金属ナノクラスターは一般的に不安定で,容易に分解または凝集してしまうことが課題であり,異種の金属元素を含む安定な金属ナノクラスターの精密合成の報告例は非常に限られていた。

これまでに研究グループは,金ナノクラスターの精密合成に成功してきた。成功の鍵は嵩高い含窒素ヘテロサイクリックカルベン(NHC)を配位子に用いる点。NHC上の炭素原子は金属原子と強固な結合を形成することが知られており,これによって本来不安定な金属ナノクラスターの構造を安定化できることを見出した。

またNHCは分子修飾が容易であり,用いるNHC構造に応じて,ナノクラスターに含まれる金原子数や形状を制御できることを明らかにしている。例えば,メシチル基を有するNHC-金化合物からは金原子10個または25個から成る金ナノクラスターが選択的に形成することが分かった。

今回,研究グループは,NHCを用いて異種の金属元素を含む金属ナノクラスターの合成に取り組んだ。金属元素として金と白金を選択し,メシチル基を有するNHC-金化合物と白金化合物共存下で水素化ホウ素ナトリウムを用いた還元反応を行なったところ,金原子8個と白金原子1個,NHC配位子を8つから成る金属ナノクラスター(Au8Pt(NHC)8)が選択的に形成していることが分かった。

得られた金属ナノクラスターの単結晶X線構造解析を行なったところ,白金原子が8つ金原子で取り囲まれた対称性の高い構造をしており,金原子は王冠のような形で配置されていることが分かった。この構造はエレクトロスプレーイオン化による質量分析(ESI-MS)および核磁気共鳴スペクトル測定(NMR)によって支持された。

次に2種類の金属元素を含む金属ナノクラスターがどのように形成したかを調べるために,ESI-MSによる反応追跡を行なった。その結果,反応初期の段階で金化合物に含まれる臭素元素が水素に置き換わった金ヒドリド種が形成していることが分かった。

時間と共に金ヒドリド種が消失し,金属ナノクラスターが形成したことから金ヒドリド種が重要な鍵中間体であることが示された。

研究グループは,今後この合成法を活用した未知の異種金属ナノ集合体の合成やその新機能開拓が期待されるとしている。

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