東大ら,金属ナノクラスターを多様に精密集積し観察

東京大学と物質・材料研究機構は,金属ナノクラスターを自在に集積化し,その集積構造を高角環状暗視野走査型透過電子顕微鏡によって初めて可視化することに成功した(ニュースリリース)。

これまで,金属ナノクラスターを構成する原子の数・配列構造・元素の種類や表面の化学修飾などの構造パラメータと基礎物性との相関を解明しようという研究が展開されてきた。

しかし,金属ナノクラスターの個数,距離,配置の対称性などを精密に制御しながら集積化する方法はいまだに確立されていない。そこで研究グループは,まず金属ナノクラスターとしては,正二十面体構造のIrAu12コアを持つ[IrAu12(dppe)5(PA)2]+から,PA配位子をそれぞれ1つ,あるいは2つ除去した[IrAu12(dppe)5(PA)1]2+(1*)と[IrAu12(dppe)5]3+ (*1*)の2種類を用意した。

単量体と架橋配位子を溶液中で混ぜると,イソシアニド基が1*や*1*の露出サイトに配位し,二量体2,直鎖型三量体3,直鎖型多量体,または三角型三量体3Tが選択的に形成されることを確認した。

得られた集積体の構造を透過電子顕微鏡で直接観察するために,集積体の溶液を電子顕微鏡観察用の炭素薄膜グリッド上で風乾するという一般的な方法で観察試料を作製したところ,多くの粒子が重なり合った像が得られた。

このような像からは,各粒子がどの集積体に属しているのか判定ができないため,想定した構造の集積体ができているのかを確認することができない。そこで,集積体の溶液にポリスチレンを加えて観察試料を作製したところ,集積体をバラバラに分散させることができた。

こうして得られた像ではIrAu12コアが白い輝点として見えた。集積体2,3,3Tそれぞれに対して,想定通りの位置にIrAu12コアが存在することが確認できた。また,2と3TにおけるIrAu12コア間の距離はそれぞれ2.4±0.4,および2.3±0.4nmで,架橋配位子の構造から予想される結合長と定量的に合致した。

さらに,集積体に可視〜紫外光を照射して得られた光吸収スペクトル上の480nm付近に,単量体ではみられなかった新しい吸収バンドが出現することを見いだした。時間依存密度汎関数法計算によって,このバンドがIrAu12コアから架橋配位子や隣接するIrAu12コアへの電子移動が関与する光学遷移であることを明らかにした。

研究グループは,この結果は,金属ナノクラスターを集積化することで,協働作用によって基礎物性が変調し,新しい機能が発現する可能性を示すとしている。

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