東大ら,露出した銀表面のハイブリッド分子触媒開発

東京大学,東京都立大学,リガクは,露出した銀表面を持つ金属ナノクラスターとリング状の金属酸化物を組み合わせたハイブリッド分子触媒の開発に成功した(ニュースリリース)。

金属原子が集合した金属ナノクラスターは,構成する原子の数や原子の配列によってさまざまな性質や機能を示す。特に,金属ナノクラスターは,その表面の反応性が高いことから触媒として機能する。

しかし,表面が露出した金属ナノクラスターは不安定であることが多く,容易に分解・凝集してしまうことが課題だった。そこで,構成する原子の数や配列を原子レベルで制御しながら,露出した表面を安定に保持している金属ナノクラスターの開発が求められていた。

研究では,リング状構造を持つ金属酸化物と銀イオン,還元剤を段階的に反応させることで,リング状金属酸化物の内側に存在する1nm径の空間に,30個の銀原子からなる銀ナノクラスターを合成した。さらに,この銀ナノクラスターに還元剤を反応させることで,銀ナノクラスター内にある電子数と銀原子の配列が変わる,銀ナノクラスターの構造変換を実現した。

開発したハイブリッド分子触媒におけるリング状構造の開口部にある銀ナノクラスターの表面は,複数の銀原子が露出した銀表面を持つ。露出した銀ナノクラスター表面は触媒反応における活性点として重要だが,同時に銀ナノクラスターが分解や構造変化する原因になるため,これまで安定に保持することは困難だった。

しかし,今回合成したハイブリッド分子触媒は,銀ナノクラスター表面が露出した分子構造を固体状態や溶液中で安定に保持していることが分かった。銀ナノクラスターが環状の金属酸化物で囲まれることで,銀ナノクラスター表面構造が安定に保持されると考えられるという。

この銀ナノクラスターは,従来の銀ナノ粒子触媒と比べて低い温度,低い水素分圧の穏和な反応条件下で,さまざまな有機分子の還元反応に触媒特性を示した。これに対し,過去に研究グループが開発した,表面が金属酸化物に覆われた銀ナノクラスターは触媒特性を示さない。

これは,今回開発したハイブリッド分子触媒が,露出した銀ナノクラスター表面で触媒特性を発揮していることを示す。また,このハイブリッド分子触媒は,通常の銀ナノ粒子触媒とは異なり,有機分子の特定の部分だけを選んで還元できることが分かった。

開発した材料は,水素分子の解離特性や触媒作用などのさまざまな機能が発現する。研究グループは,触媒としての応用に加えて,光機能材料,センサー,分子エレクトロニクスといった幅広い分野への応用が期待されるとしている。

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