京都大学の研究グループは,単一組成を有する分子状の金25核ナノクラスターにおいて,保護配位子であるチオラート上の置換基として水素結合性のペプチドが樹状に分岐したペプチドデンドロンを用いることで,金ナノクラスター表面に超分子反応場が形成され,触媒活性が大きく向上することを見出した(ニュースリリース)。
金属ナノクラスターは数個~数十個の金属から成る単一組成を有する分子であり,様々な反応に利用される金属ナノ粒子よりも高い比表面積を持つことから,触媒としての利用が期待されている。
これまでに,様々な配位子で保護された金属ナノクラスターが報告されているが,これまで金属ナノクラスターにおける配位子は構造安定化のために用いられることが一般的であり,配位子上の置換基を活用した触媒特性や選択性の向上に関する知見は浅く,未だ発展途上の分野だった。
そこで,研究グループは金ナノクラスターによるアルキン酸の触媒的環化反応を用いて,触媒反応に対する超分子反応場の効果を解明することを目的として研究に着手した。
研究では,金25核ナノクラスターを触媒とするアルキン酸の環化反応において,L-オルニチンを繰り返し単位とするペプチドデンドロンチオラート配位子が触媒活性を大きく向上する効果を示すことを明らかにした。
世代数の異なるペプチドデンドロンチオラート間では第一世代の配位子が最も反応加速効果が高く,水素結合部位を持たないアルキルチオラートに比べて約40倍の反応速度向上を示すことを見出した。また,配位子間の多点水素結合は触媒の耐久性にも大きく寄与し,100日以上の反応においても触媒の失活は観測されず,触媒回転数は80万回を超えることが分かった。
高い触媒活性の起源を調べるために,溶液中における基質と配位子,および金ナノクラスターとの会合実験を行なった結果,基質と配位子間では通常の水素結合を形成するのみであるのに対し,金ナノクラスター上では複数の配位子が基質に対して多点水素結合することで特異的に反応場に取り込んでいることが明らかになった。
クラウンエーテルに見られるような,このような多点水素結合は金ナノクラスター上においてペプチドデンドロン配位子が水素結合に基づく超分子反応場を形成したことではじめて誘起されるものであり,超分子化学的な配位子設計が金属ナノクラスターの触媒活性を大きく向上することを示すことができたという。
研究グループはこの成果について,金属ナノクラスターの安定性を担保しつつ,高い触媒活性を実現する手法であり,光触媒など次世代の高活性触媒の開発につながるものだとしている。




