東北大学,理化学研究所,北陸先端科学技術大学院大学は,軽量・高強度なマグネシウム合金の加熱実験で,析出物の生成から成長までの過程をナノメートルスケールの動画で観察し,個々の析出物の成長速度や方向の定量評価にも初めて成功した(ニュースリリース)。
マグネシウム合金は最も軽量で高強度な実用金属として,自動車や航空機などへの応用が期待されている。強度向上には希土類添加による微細析出物の形成が重要だが,その生成や成長の仕組みを高温・バルク状態で直接観察することは従来困難だった。そのため,実用環境に近い条件でナノスケール観察できる新技術が求められている。
研究グループは,大型放射光施設SPring-8の高速積分型X線画像検出器CITIUSを備えた理研ビームラインBL29XUにて,三角形開口を用いた動的CXDI光学系を構築し,700Kで加熱保持したマグネシウム-亜鉛-ガドリニウム(Mg97Zn1Gd2)合金試料からの回折強度パターンを取得した。
試料の一か所にX線を照明し続け,連続的に繰り返し測定した回折強度パターンに対して,X線光子相関分光(XPCS)と動的コヒーレントX線回折イメージング(CXDI)を適用することで,速いダイナミクスを解析した。
一方,試料を走査して取得した複数枚の回折強度パターンに対して,X線タイコグラフィを適用することで,緩やかなダイナミクスを広い視野で解析した。
まず,X線タイコグラフィを用いて,Mg97Zn1Gd2合金を700Kで10時間にわたって加熱保持した際の緩やかな構造の変化を追跡した。その結果,合金内部に元々存在していた(Mg,Zn)3Gdという化合物が溶解し,長周期積層構造(LPSO構造)が析出,粗大化していく様子を明瞭に捉えることに成功した。
次に,より短い時間スケールで起こる構造の変化を捉えるため,連続取得した回折強度パターンについて,動的CXDIとXPCSによる解析を実施した。その結果,700Kで加熱保持を開始してからわずか数十秒で析出物の形成が始まり,その後数百秒かけて粗大化することを明らかにした。
さらに,動的CXDIで得られた動画データに対して,オプティカルフロー解析を適用した。これにより,個々の析出物がどの方向にどれくらいの速さで成長しているかを可視化し,構造変化の速度を定量的に評価することに成功した。
研究グループは,今回の成果は金属材料にとどまらず,高分子材料,触媒・電池材料など,多様な用途の物質内部で生じる動的現象の解明に応用可能な汎用的フレームワークとして期待されるとしている。
