兵庫県立大など、右・左回りの円偏光照射でナノ構造表面に異なる温度パターンを実証

兵庫県立大学、東北大学、関西学院大学、早稲田大学、北海学園大学、物質・材料研究機構、北海道大学、大阪公立大学は、窒化チタンという材料でナノ構造を作ることで、光の右回り・左回りという偏光回転の違いだけで、ナノ構造表面に全く異なる温度パターンが現れることを明らかにした(ニュースリリース)。

プラスチックボトルに入った金ナノ粒子のコロイド水溶液の金の色は、本来は文字通り黄金色だが、ナノ粒子になると、電子が集団でいっせいに振動する局在プラズモンが強く光を吸収するため、鮮やかな赤色を呈す。これまで金ナノ粒子のプラズモン加熱は、がん細胞の光温熱治療や熱化学反応の局所パターニング、そして局所的な液体の流れ制御への応用が進められてきた。

プラズモン加熱の研究において、ひとつの常識となっていたのが、光で加熱されているナノ粒子の表面は、完全に等温になるというものだった。そもそも金は、多くの金属の中でも特に熱の伝導性が良いので、非常に小さなナノ粒子の表面では温度差が生じるはずがないとされてきた。

(写真)金ナノ粒子のコロイド水溶液

研究グループでは、ナノ粒子の表面の狙った箇所だけを、光によって選択的に加熱することができれば、新たなブレイクスルーになると考えてきた。

これを実現する鍵として見出したのが、窒化チタンという材料。この材料は、金と良く似た黄金色の金属光沢を示すため、ナノ粒子にすればプラズモン加熱に利用可能。そして最も重要な点は、この窒化チタンの熱の伝導性が、金の1/10以下であること。

熱の伝導性が低い材料でできたナノ構造に光を照射すると、局在プラズモンという電子の波の振動パターンが、ナノ構造の表面温度分布にくっきりと転写されるはずであると予測した。

(写真)研究グループが作製した窒化チタンの薄膜

このアイデアを実証するために、窒化チタンを材料とする全長800nmのS字ナノ構造を、数値シミュレーションによって設計した。このS字ナノ構造にレーザー照射する際に、光の波長や強度は固定したままで、円偏光の回転方向だけを右回り・左回りで変えると、ナノ構造の表面に、全く異なる温度パターンが現れることが、シミュレーションで示唆された。

(図)窒化チタンのS字ナノ構造への円偏光照射によるナノ構造表面の温度パターンのスイッチング

このシミュレーションを検証するために、半導体の微細加工に用いられる電子線リソグラフィなどの技術によってS字ナノ構造を実際に作製し、レーザー照射による実証実験を行なった。実験では、熱反応によって生成物が形成する酸化亜鉛の水熱合成を、このS字ナノ構造へのレーザー照射によって誘起したところ、シミュレーションと一致する結果が得られた。

研究グループは、化学反応の局所的な制御や、微小な液体の流れ・物質輸送を操る新しい技術につながると期待されるとしている。

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