東大ら,テラヘルツ~深紫外で98%超の吸収構造実現

東京大学,フィンランドUniversity of Eastern Finland,リトアニアState Research Institute Center for Physical Sciences and Technologyは,シリコンで作製したモスアイ構造に厚さ100 nmのカーボン薄膜をコートすることで,1〜1200THzという極めて広い周波数領域において98%以上の吸収率を示す人工材料を実現した(ニュースリリース)。

散乱された不要な光・電磁波を抑制する電磁波吸収材料を,人工構造を用いて実現する試みが活発に行なわれているが,広帯域な吸収特性の実現が課題になっていた。

今回作製した超広帯域吸収材料は,モスアイ構造によるインピーダンス整合と,炭素被膜の広帯域吸収特性を組み合わせるという新しい設計手法により,これまでにない超広帯域かつ高効率の光吸収を実現した。

東京大学ではこれまでに,フェムト秒レーザー加工を用いて,サブミリサイズのピラミッド状の構造が周期的に配列したモスアイ構造を作製する技術を開発してきた。今回,これを活用して,まず,高さ240mm,周期が67mmのシリコンモスアイ構造を作製した。

続いて,化学気相成長法(CVD)を用いてその表面と基板裏面を,カーボン薄膜でコーティングし,光学特性のカーボン膜厚依存性をシミュレーションしたところ,膜厚が100nmの場合に,周波数1THz以上の領域で吸収がほぼ100%になることが明らかになり,この条件で成膜を行なった。

幅広い波長領域で透過スペクトル及び反射スペクトルを計測した結果,周波数1THzから1200THzの,テラヘルツ領域から深紫外領域におよぶほぼ光の全領域をカバーする広い帯域において,吸収が98%を超える超広帯域吸収特性が実現していた。

また,テラヘルツ帯の低周波数領域においては,モスアイ構造の効果によってモスアイ構造の近傍でのカーボン薄膜と電磁波の相互作用長が増大し,吸収が増大されていることがわかった。また,膜厚の最適化によって,一回の反射における透過量と反射量が適切に制御された状態で多重反射が生じる結果,100%に近い吸収が生じることが明らかになった。

この手法は,テラヘルツから可視光領域へほぼすべての波長領域でほぼ100%に近い吸収を示すため,電磁波遮蔽材に加えて,エネルギー変換や赤外放射制御などへの様々な応用が期待される。また,堅牢性を有してることから,研究グループは,次世代無線通信にも有用なデバイスの開発につながるとしている。

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