経済安全保障が国家戦略の中核に据えられる時代において,科学技術の優位性は単なる産業競争力の源泉にとどまらず,国際的な交渉力や自律性の基盤となっている。とりわけ,半導体産業と光・レーザー技術は,情報通信,製造,医療,宇宙・防衛など多岐にわたる分野で不可欠な基盤技術であり,その確保と育成は喫緊の課題となっている。
政府は「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」を通じて,半導体微細加工技術や高効率レーザー加工技術の研究開発を推進している。この取り組みは,国家間の技術覇権争いが激化する中で,日本が技術的不可欠性を確保するための重要な一歩である。特に,フォトニック・バンド・ギャップ・ファイバー(PBGF)を用いたレーザー技術や,次世代のEUV露光用光源の開発は,将来的な半導体製造の鍵を握る技術として注目されている。

しかしながら,これらの取り組みを真に国家戦略として機能させるためには,単なる予算措置や技術開発の加速にとどまらず,研究開発プロジェクトの設計思想そのものを見直す必要があるし,市場を作り出す仕組みも重要だ。
第一に,研究開発は「技術のための技術」ではなく,「社会実装と国際連携を前提とした技術」であるべきである。光・レーザー技術の応用は,製造業の高度化のみならず,医療診断,環境センシング,量子通信・コンピューターなど量子技術が社会課題の解決に直結する可能性を秘めている。
第二に,産学官連携の質的転換が求められる。従来の縦割り的な連携ではなく,技術者,研究者,政策担当者が共通のビジョンを持ち,長期的なロードマップに基づいて協働する体制が不可欠だろう。
第三に,人材育成と技術継承の視点が欠かせない。先端技術は設備や資金だけでは成立せず,長期にわたる知識の蓄積と人材の流動性が鍵となる。若手研究者が産業界とアカデミアを自在に往来できる制度設計,技術者の社会的評価の向上,そして国際的な人材ネットワークの構築が急務ではないだろうか。
経済安全保障政策は「閉じた技術保護」ではなく,「開かれた技術戦略」であるべきである。国際的な技術標準の形成,共同研究の推進,知的財産の戦略的活用などを通じて,日本の技術が世界の信頼を得ることが,真の安全保障につながるものと考えられる。
光技術や半導体は,単なる産業基盤ではなく,未来社会の構造そのものを形づくる技術である。政府は,これらの技術を経済安全保障の柱として位置づけ,戦略的かつ包摂的な研究開発体制の構築を急ぐべきだろう。



