【主張】限界への挑戦を支える光技術

 女子ゴルフ海外メジャーの今季最終戦となる全英女子オープンでは,山下美夢有が安定したショットと強靱なメンタルで見事な優勝を飾った。海外メジャー制覇は,日本人としては6人目の快挙である。さらに驚いたのは,トップ5 に日本人選手が3人名を連ね,日本勢の強さが際立った大会となった。

 ゴルフに限らず,近年における日本人アスリートの活躍は目覚ましい。大谷翔平は投打にわたり異次元なパフォーマンスで世界中を魅了している。サッカー,テニス,バスケットボールなど他の競技でも,日本人選手が世界の舞台で堂々たる戦いを繰り広げ,感動と活力を日本に届けている。

 こうした活躍の背景には,選手自身の努力や才能はもちろん,科学技術の発展と支えがあることも見逃してはならない。今やスポーツは「気合いと根性」だけで勝てる時代ではない。緻密なデータ分析,運動生理学に基づくトレーニング,リアルタイムでのバイオメカニクス解析,そして試合中の判定支援に至るまで,光技術をはじめとした科学の力が,現代スポーツのあらゆる場面で重要な役割を担っている。

 

 その代表例として「ホークアイ(Hawk-Eye)」がある。2001年にイギリスのホークアイ・イノベーションズ(現在はソニーグループ傘下)が開発した映像判定支援システムで,複数の高速度カメラでボールや選手の動きを捉え,3 次元的に位置を解析することで,誤差数ミリ以内の高精度な判定が可能となる。2006年にテニスの大会で初めて導入されて以降,サッカーや野球など多くの競技に採用され,誤審の防止や審判への負荷軽減,観客の納得感向上などに貢献している。

 近年ではVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)やゴールライン・テクノロジーなどにも活用され,2022 年のサッカーワールドカップでの「三苫の1 ミリ」は記憶に新しい。ゴールラインぎりぎりで放たれたクロスは,一見するとボールが完全に出ているように思えた。だが,VARによりボールのわずかな一部がライン上に残っていたと判定され,日本のゴールが認められた。世界を驚かせたこの判定は,まさに光と画像処理技術の勝利だった。

 スポーツを支える光技術は,審判支援にとどまらない。選手のフォーム解析,練習中の動作フィードバック,筋肉の酸素飽和度を計測する近赤外分光(NIRS)など,光は見えないものを可視化するツールとして活躍している。光ファイバーセンサーによるウェアラブル計測も,選手の疲労蓄積やケガの予兆を捉える手段として注目されている。

 そして9月,東京では世界陸上が幕を開ける。日本での開催は1991年以来,実に34年ぶりとなる。コンマ何秒を争う陸上競技の舞台では,スタートやゴールの瞬間を捉える計測技術に加え,競技場を均一に照らす照明や,大容量データをリアルタイムで伝送する超高速光通信など,競技を支えるインフラでも光が活躍している。光のまなざしに見守られながら,世界を代表するアスリートたちが限界に挑む,その歴史的な瞬間に立ち会えることを期待したい。

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