3月19日、三省堂書店の神田神保町本店(東京千代田区)がリニューアルオープンした。本の街、神保町のランドマークの営業再開だけに、オープン初日は開店前から愛読家など大勢の来店客が列をなした。

新たなにぎわいが増した神保町は、海外でも「世界最大規模の古書店街」として知られ、昨年は英国タイムアウトによる「世界で最もクールな街」に選ばれ、話題を集めた。読書や書店など「本」をめぐり、こうした前向きなニュースに接するのは久しぶりかもしれない。それほどまでに、ここ数年、本に関して聞こえてくるのは厳しい話ばかりだ。

紙の出版物、1兆円割れ
全国大学生生活協同組合連合会が2月に公表した大学生の生活実態に関する調査結果によると、1カ月の書籍代(漫画、雑誌、電子書籍を含む)が調査開始以来、初めて1000円を下回ったという。読書離れは若年層だけでなく全世代で進み、巨大ECサイトのアマゾンの登場も影響し、地方を中心に全国の書店数は直近10年間で3割減り、書店が1軒もない自治体は約500市町村にのぼっている。
読書離れ、書店減少は当然のことながら出版社の経営不振につながる。2025年の紙の書籍、雑誌の売り上げは9647億円(前年比4.1%減)と50年ぶりに1兆円を割り込んだ。今やピーク時(1996年、2兆6564億円)の4割以下の水準だ。減少分が電子書籍に置き換わっているのであれば問題はないが、実はそうでもない。米国では電子書籍が早期に普及したが、日本はコミックが大半で、書籍全体に占める電子書籍の割合は2~3割にとどまる。
読書離れは複合的な要素が絡み合っているものの、その要因は誰もが想像する通りだ。スマートフォンとSNSの普及により、可処分時間の大半をタイムパフォーマンス、即効性の快楽などの理由からスマホが占領。また、インターネット、そして生成AIの登場などで情報収集のスタイルが劇的な変貌を遂げたことなどだろう。
読書がもたらす効用
一方で本を読むことの大切さについても、国民の多くは認識している。読書の効用は知識の獲得にとどまらず、医学や脳科学、心理学など広範な分野に及んでおり、文部科学省は「読書の重要性が増すことはあっても減ることはない」「自分でものを考える必要があるからこそ、読書が一層必要になる」とする。
書店も出版社もこの難局を乗り切るため、新たな試みを打ち出し、行政も支援を惜しまない。しかし、その何倍、何十倍ものスピードで本を読まない人が増えているのが現実だ。光を専門とする科学誌を40年以上にわたって発行する小社も、この荒波にもまれているわけで、今後の展望は見通せず、現状では一筋の光も見えない。
映画が歴代興行収入1位の大ヒットとなり、文庫本も売れている「国宝」を例に、「面白ければ、役に立つものであれば売れる」という声も聞くが、それほど単純な話ではない。「物価高」「人口減少」「国際秩序の不安定化」など、日本が抱える問題はいくつもあるが、できれば、政府はこの「読書離れ」も忘れないでいただきたい。



