日常光デジタルホログラフィ

3. 自己干渉計を用いた日常光デジタルホログラフィに関する研究進展

自己干渉計を用いた日常光デジタルホログラフィの強みは,太陽等の自然光源をホログラフィ撮影に適用でき,Gabor以来のアクティブ照明を前提としたホログラフィ14)とは全く独立した,完全パッシブ照明ホログラフィ技術を実現できる点にある。現在までに世界的に少数の研究グループより太陽光源を用いたデジタルホログラフィが実証されており,我々の研究グループは屋外構造物のパッシブホログラフィック動画イメージングを世界で初めて実証してきた7)図2に再生動画像の一部を示す。車輪付き机上にデジタルホログラフィシステムを構築し(詳細は参考文献7参照),太陽光照明下の深さ数十メートル範囲の屋外構造物を被写体として,単眼フルカラー3次元動画記録した。図2より,動く木の葉の揺れる様子が動画再生されており,動体の3次元動画イメージング可能性が実証された。白色LEDを用いた,より変位量の大きな3次元物体の動画記録も実証されている7)。これらの実験においては,移動体上に光学システムを構築してホログラム動画記録しており,移動体に搭載してデジタル動画ホログラフィ計測を行なえる事が示されている。

図2 自然光源を用いたデジタルホログラフィによる完全パッシブ単眼フルカラー3次元動画イメージング。数値リフォーカシングを適用して,ホログラム動画より各深さの再生動画像を再生。動画再生像の左より右に時間の流れ。矢印は動く木の葉。各再生像に対して平均値フィルタを2回適用。各フレームの露光時間は10 ms。2022年1月に実験。参考文献7には先端デノイジング技術の適用により鮮明な再生像が掲載。
図2 自然光源を用いたデジタルホログラフィによる完全パッシブ単眼フルカラー3次元動画イメージング。数値リフォーカシングを適用して,ホログラム動画より各深さの再生動画像を再生。動画再生像の左より右に時間の流れ。矢印は動く木の葉。各再生像に対して平均値フィルタを2回適用。各フレームの露光時間は10 ms。2022年1月に実験。参考文献7には先端デノイジング技術の適用により鮮明な再生像が掲載。

レーザー光デジタルホログラフィでは一般に,物体照明光と参照光を生成するために2光束干渉計を構築し,耐振動性を考慮して除振機構付き光学定盤を必要とした。自己干渉計を用いると,移動体上に光学システムを構築できるのみならず,光学システムを圧倒的にコンパクト化でき,デジタルホログラフィシステムの集積化への道が拓かれる。我々の研究グループでは図3に示す指先サイズの光学システム4),手のひらサイズの撮影システム6)を試作してきた。図3に示す様な光学システムの集積化は,メインレンズの性能を最大限に発揮した高分解能単眼3次元動画計測,広範囲単眼3次元動画計測のために今後より重要性が増すものと予想される。

図3 日常光デジタルホログラフィシステムの集積化。(a)電子回路基板含めて指先サイズのホログラフィ動画センサー。(b)手のひらサイズのホログラフィ動画撮影システム。
図3 日常光デジタルホログラフィシステムの集積化。(a)電子回路基板含めて指先サイズのホログラフィ動画センサー。(b)手のひらサイズのホログラフィ動画撮影システム。

偏光イメージセンサー構造の工夫によってもデジタルホログラフィの性能を向上できる。図2より,市販フルカラー偏光イメージセンサーを用いて単眼フルカラー3次元動画情報取得できると実証されているが,図4に示す通り,当該市販センサー16画素を使ってフルカラー3次元情報1画素を構成するため画素数が著しく低減する。当該問題に対して,計算コヒーレント多重技術と,図4(b)に示す波長板アレイと偏光子の積層された偏光イメージセンサーを用いると,波長多重ホログラムとホログラフィック波長多重技術の活用により,当該センサー7画素を使ってフルカラー3次元情報1画素を構成できる様になる3)。センサーの画素数が限定された条件において,センサー構造と信号処理の工夫によってより多くの画素数を確保でき,今後より一層の工夫が期待される。

図4 光学システムに適用される偏光イメージセンサーの構造と得られるフルカラーホログラム。(a)市販フルカラー偏光イメージセンサー,(b)波長板アレイと偏光フィルタが積層された偏光イメージセンサーにより得られるホログラム。
図4 光学システムに適用される偏光イメージセンサーの構造と得られるフルカラーホログラム。(a)市販フルカラー偏光イメージセンサー,(b)波長板アレイと偏光フィルタが積層された偏光イメージセンサーにより得られるホログラム。

偏光イメージセンサーを用いる日常光デジタルホログラフィ方式は今日,単眼フルカラー3次元動画イメージングを行なう際に世界的に利用される技術として認知されている。一方,量子情報理論に基づく,光子単位で考える微弱光環境下において,位相シフト干渉法は原理的に優れた計測精度を誇ると明らかにされているが19),偏光イメージセンサーを用いる位相シフト干渉計では光利用効率は原理的に最大25%,実際には10%前後に低下する。そのため,ホログラフィック蛍光顕微鏡2)への適用等において,光利用効率が大きな課題となる。

当該課題の解決のために,原理的な光利用効率100%を誇り多次元物理情報を計測する物理フィルタフリー日常光デジタルホログラフィ法を発明し5),現在計測高精度化を行なう研究開発を進め,量子情報理論の実験検証,ゆっくり時間変化する微弱光の多次元動画観察等への適用を目指している。

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