4. 自己参照干渉計を用いた日常光デジタルホログラフィに関する研究進展
自己参照干渉計を用いた日常光デジタルホログラフィの強みは,物理的な被写界深度を超えて物体の定量位相画像を得られる点にあり,顕微鏡応用時には既存の位相差顕微鏡,定量位相顕微鏡に対する進歩性として挙げられる。市販光学顕微鏡(オリンパス,IX-73)に図1(b)に基づく光学システムを接続し,HeLa細胞と,異なる深さに設置された多数微粒子を試料として,ハロゲンランプを光源に用いた実証実験を行なった。構築した光学システムと実験結果を図5に示す。デジタルホログラフィによる数値リフォーカシングを通じて,いずれも物理的合焦面と異なる深さの再生像を得られており,物理的被写界深度の限界を突破する定量位相顕微鏡を提供できる事が実証された。

定量位相顕微鏡の用途は一般に,定量位相画像取得に限定される。一方,計算コヒーレント多重を適用して,当該ホログラフィ技術に基づく複数波長帯の顕微鏡システム9)を開発すれば,物理的な被写界深度を超えて合焦した強度画像,定量位相画像を複数波長帯に渡って得られるため,深い3次元空間範囲に渡ってフルカラー画像,定量位相画像を取得できる単眼3次元顕微鏡を提供できる。当該顕微鏡システムは,図5に示す光学系にハロゲンランプとマルチバンドパスフィルタ,または複数LEDを導入すると実現できる。図6に複数波長定量位相イメージング,図7にカラー3次元イメージングの実験結果を示す。図6,図7より,市販の光学機器と少数の光学素子の構成を用いて,日常光による波長多重ホログラムを取得でき,任意の深さに合焦した上で複数波長帯同時にホログラフィ計測可能と示された。


本章に示すホログラフィ技術を用いれば,レーザーを用いた専用顕微鏡と除振機構付き光学定盤を用意する必要を省き,光学顕微鏡等の市販光学機器に市販光学素子を接続してホログラフィ顕微鏡を実現できる。即ち,世の中の市販光学顕微鏡をホログラフィ顕微鏡に変換できる可能性を示している。また,図4(b)に示す波長板アレイと偏光フィルタが積層された偏光イメージセンサーを用いれば,センサーのフレームレートで動画計測できると示唆されており9),国産多次元ホログラフィック波面センサー技術として新たな展開を切り拓くものと予想される。



