はじめに:「21世紀は光とシリコンの時代」
この節の標題の「21世紀は光とシリコンの時代」は,本誌1999年2月号に掲載された筆者へのインタビュー記事の見出しである。当時,筆者は「21世紀のエレクトロニクスにおいては,情報ネットワークと人間との融合が不可欠なテーマとなり,その実現を支える新たなデバイスは,光とシリコンを基盤とするだろう」と述べた。そして四半世紀を経た2025年,その予見はまさに現実のものとなりつつある。「情報ネットワークと人間との融合」は生成AIの発展によって顕在化し,「光とシリコン」はNDEVIAの躍進や,データセンターにおける光インターコネクト技術の普及を通じて,コンピュータの性能向上とエネルギー効率の改善に多大な貢献を果たしている。
しかし,この進展はあくまで序章に過ぎない。これからの25年,光技術の舞台はさらに広がり,その光芒は情報技術,核融合エネルギー,人工光合成,さらには宇宙開発の領域にまで届くであろう。特に,AIをはじめとする情報技術の分野では,光電融合と量子技術が中心的な役割を担うことが予想される。
振り返るに,21世紀の最初の四半世紀を「光とシリコンの時代」と位置づけるならば,次なる四半世紀は「光,シリコン,そして量子の時代」として,私たちを未知なる未来へと誘う新たな歴史の扉を開くことであろう。光電融合と量子技術は,その扉を押し開く鍵であり,現代技術の限界を超え,新たな可能性を拓く力を秘めている。本小文では,編集部の要請に応えて,この二つの革新的技術について,一研究者としての視座から,新年にあたっての雑感を述べる。
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