東大ら,半導体露光プロセスのみで平面レンズを作製

東京大学とJSRは,半導体露光プロセスのみを用いて平面レンズを大量生産することが可能な手法を開発することに成功した(ニュースリリース)。

レンズは,カメラ,センサーなどあらゆる光学機器に使用される最も基本的な光学素子の一つ。発明されてから今日までの長い間,研磨等の技術を用いて透明材料を球面上に加工することで作製されてきたが,近年,リソグラフィー等の微細加工技術を用いて作製した光の波長と同程度以下の大きさのサブミクロン人工構造を用いることで,メタレンズ等と呼ばれる平面状のレンズを作る技術が発明され,その高い制御性やコンパクト性からレンズ作製技術に革新をもたらすものとして注目されている。

しかしながら,これらの人工微細構造の作製には,成膜装置,半導体露光装置,ドライエッチング装置など複数の装置を用いることが必要であり,構造作製の過程が煩雑であることが問題となっていた。

今回の研究で作製した平面レンズは,幅の異なるリングが同心円状に並んだフレネルゾーンプレート(FZP)と呼ばれるレンズ。リングの幅と間隔は外側ほど小さくなり,最も外側では1μm程度になる。

このリングは光を遮断する必要があり,今回の研究では,JSRが開発したカラーレジストと呼ばれる特殊なレジストを用いて平面レンズを作製した。

このレジストは半導体微細加工プロセスにおいて,微細パターンを形成することが可能なフォトレジストの一種で,特定の波長を吸収して光を遮断するという特徴を有する。そのため,このカラーレジストを用いれば,半導体露光プロセスのみで,フレネルゾーンプレートレンズを作製することができる。

8インチのガラス基板全体にステッパーを用いて作製したFZPレンズを用いて,波長550nmの光を集光したところ,約1.1μmのビーム径に集光できることが明らかになった。また,この集光特性は数値計算シミュレーションの結果とも極めて良く一致したという。さらに,このレンズをイメージング用のレンズとして用いたところ,約1.1μmの分解能が達成できることも明らかになった。

研究グループは,波長450nmおよび650nmの光に対しても同等の高い集光性を示すレンズを作製することに成功しており,この手法によってさまざまな波長の可視光領域の平面レンズを簡便に作製することが可能になるとしている。

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