岐阜大学の研究グループは、ペロブスカイト太陽電池の電子輸送層に、エネルギー準位の異なる2種類の酸化チタン(TiO₂)を積層することで、電子輸送に適した「エネルギーの階段」を形成する材料設計を提案した。これにより、光電変換効率19.20%を達成した(ニュースリリース)。

ペロブスカイト太陽電池の社会実装に向けた取り組みが加速する中、将来の普及拡大に貢献するさらなる機能材料やデバイスの研究開発が求められている。このような光エネルギー変換技術の多様化と高度化を目指し、研究グループでは、化学の力で新しい材料を創り出すことを基盤として、酸化物半導体の「ナノ構造エンジニアリング(微細構造と電子物性の制御)」に関する研究を進めている。
透過型電子顕微鏡(TEM)等を利用し、反応温度を変えて合成した酸化チタン微粒子を観察した。その結果、5度で合成した束状の酸化チタン微粒子は、500度の熱処理によってロッド状粒子へと構造変換する一方、60度で合成した粒状の酸化チタンは、粒子同士が集まってつながった構造へと変化することが分かった。
いずれも同じルチル型結晶相をもちながら、合成時の形態の違いを起点として、熱処理後に異なる微細構造が形成されることを明らかにした。紫外光電子分光法(UPS)、光吸収スペクトル測定、電気化学測定であるMott Schottky測定等を組み合わせて電子物性を評価した結果、2種類のルチル型酸化チタンのエネルギー準位に違いがあることが示された。これにより、異なる材料や異なる結晶相を組み合わせることなく、同じルチル型酸化チタンがもつエネルギー準位の違いを利用して、「エネルギーの階段」となる積層構造が設計可能であることを示した。
2種類の酸化チタンを異なる順序でFTOガラス基板上に積層して電子輸送層とし、FAPbI3(ホルムアミジニウム鉛ヨウ化物)を光吸収層として用いてペロブスカイト太陽電池を作製したところ、発電性能が明確に変化した。特に、「エネルギーの階段」となるように2種類の酸化チタンを配置した構造では、19.20%の光電変換効率を示し、逆の順序で積層した構造(17.37%)や単層構造よりも高い発電性能が得られた。なお、今回の研究では酸化チタン電子輸送層の効果を明確に比較するため、ペロブスカイト光吸収層には文献に基づく標準的な作製条件を用い、その条件を統一して評価を行なった。また、別途緻密な酸化チタン層を設けることなく、作製した酸化チタン積層膜を電子輸送層として直接用いている。
これらの結果から、同じ結晶相の酸化チタンでも、微細構造と電子物性の異なる材料を適切な順序で積層することが、電子輸送および界面設計を通じた太陽電池の高性能化に有効であることを示した。
今後、酸化チタンの微細構造や積層構造をさらに精密に制御し、光吸収材料に応じて電子の流れを最適化できる電子輸送層の開発を進めるという。同じ結晶相の酸化チタンの組み合わせに着目して示した「エネルギーの階段」という材料設計を発展させることで、ペロブスカイト太陽電池のさらなる高性能化に加え、光吸収材料の選択肢を広げ、多彩な次世代太陽電池への展開につながることが期待されるととしている。また、今回の研究で得られた材料設計の考え方は、酸化チタン以外の酸化物半導体材料への展開も期待されるという。




