大阪公立大学は、1台の中波赤外線(MWIR)カメラで、人の体温・呼吸数・心拍数を非接触で同時に測定する方法を開発した(ニュースリリース)。

今まで感染症のスクリーニングでは、赤外線カメラによる体温測定が中心でしたが、発熱しない感染者も多く、限界が指摘されてきた。一方で、呼吸や心拍の変化は体調異変の早期サインとして重要であり、非接触で複数の生体情報を同時に測る技術が求められている。
しかし、従来の方法は複数のセンサーを組み合わせる必要があり、設置が複雑で、測定できる角度や環境にも制約があった。加えて、顔の正面から呼吸をとらえる技術は難しく、体温・呼吸数・心拍数を同時に評価する手法は確立されていなかった。
今回の研究は、1台の中波赤外線(MWIR)カメラが持つ「二つの特性」を活かし、非接触で体温・呼吸数・心拍数を同時に測定する新しいアプローチに挑戦した。まず、国際基準(ISO/TR 13154)に基づき、MWIRカメラで目頭(内眼角)付近の温度を測定し、体温の指標とした。MWIRカメラは3 μm~5 μmの赤外線を検出するが、二酸化炭素(CO2)が約4.3μmの波長を吸収するため、息に含まれるCO₂がカメラに映ると周囲より暗く見える。
この特徴を利用し、顔の正面から「息の流れ」を映し出し、呼吸の回数を数えた。さらに、映像から息の出る速さを読み取ることで、CO2の排出量を推定する新しい方法も提案した。また、MWIRカメラは温度の変化を高精度に捉えられるため、心臓の拍動による目頭付近の温度ゆらぎから、心拍を推定した。これらの測定データを検証したところ、体温・呼吸数・心拍数のいずれも、従来の測定機器によるデータと高い相関を示し、実用化に向けた有望な結果が得られた。
今回の研究は、1台のカメラで複数のバイタルを同時に測定できる世界初の手法で、感染症スクリーニングの精度向上に貢献するという。この技術が実用化されれば、空港や病院、学校などでの感染症スクリーニングがより正確かつスムーズになり、また、非接触で測定できるため、介護現場や在宅医療でも役立つ可能性が考えられる。今後は、より多様な環境や年齢層での検証、動きのある状況での測定精度向上、装置の小型化などが課題となる。将来的には、日常生活の中で自然に健康状態を見守る「スマートヘルスケア」の基盤技術として発展することが期待されるとしている。



