赤外線センシングの最前線を探る-技術革新と応用展開の現状

展示・ポスターセッションの様子

赤外線アレイセンサフォーラム実行委員会は2025年7月18日,立命館大学大阪いばらきキャンパスにおいて「赤外線アレイセンサフォーラム2025(IRASF2025)」を開催した。

本フォーラムは,赤外線イメージング/センシング技術に関わる国内ビジネスの活性化を目的に,毎年実施されているもので,今回で第16回目を数える。

会場は,立命館大学大阪いばらきキャンパス内フューチャープラザの1階イベントホールおよび2階グランドホールを用い,展示・ポスターセッションとオーラルセッション,そしてインターラクティブセッションが行なわれた。

冒頭のオーラルセッションでは,赤外線光学技術の最新動向をテーマとした講演が続いた。

ナルックスは,「遠赤外線用レンズ開発:プラスチックからメタレンズまで」と題し,同社が手がける反射光学系やプラスチックレンズ,さらに新たに開発を進めている遠赤外線撮像用メタレンズについて講演した。メタレンズを,設計から評価まで一貫して社内で実施した事例を紹介。性能シミュレーションの結果に基づいた試作例を交え,将来的な製品化に向けた展望を語った。

続いて,コニカミノルタが「赤外線光学系用メタサーフェス技術:収差改善と低コスト化の検討」をテーマに,波長以下の微細構造からなる光学素子“メタサーフェス”を用いた光学系の高性能化とコスト削減について述べた。メタサーフェスによる波面収差補正や,バルクレンズとのハイブリッド構成による低コスト光学系の事例に加え,幾何光学的設計の導入といった先進的な取り組みが紹介された。

午前のセッションの最後には,JVCケンウッドが「非冷却赤外線カメラ技術とAIによる画像認識への応用」に関する講演を行なった。近年進展する赤外線センサの狭小ピッチ化や多画素化により,昼夜・天候を問わずセンシングが可能な赤外線カメラの応用が進んでいる。同社ではこれら技術にAIを組み合わせることで,車載用途や次世代ITSに適した画像認識性能の向上を目指しており,具体的な画像処理技術や認識精度改善の取り組みが披露された。

午後のセッションでは,宇宙応用や防衛分野での赤外線技術の展開が紹介された。

ビジョンセンシングは「小型衛星搭載赤外線カメラ」と題し,同社が開発した3Uサイズの小型衛星に搭載する遠赤外線カメラについて紹介。宇宙デブリへのランデブー用途などで注目されており,打ち上げ後の温度校正方法や評価試験の取り組みについても述べられた。

続いて,香川大学の石丸伊知郎氏が「中赤外パッシブ分光イメージング技術とその応用」をテーマに講演。物体が放射する中赤外領域の光を分析し,物質の内部成分を推定する技術で,照明不要かつ遠隔からの計測が可能なことから,ヘルスケアやインフラ診断,環境計測など幅広い応用が期待されている。講演では,乳酸・血糖値の同時計測などの実例も示された。

最後に,防衛装備庁新世代装備研究所の大西洋一氏が「赤外線イメージング技術の防衛応用」と題して登壇。赤外線センサが自衛隊の監視や誘導,火器管制などにおいて重要な役割を果たしていることを解説したうえで,民間の先端的な赤外線技術を防衛応用へと橋渡しする装備庁の取り組みについて紹介した。

本フォーラムを通じて,赤外線技術の多様な応用分野における進展と,それを支える光学設計・センシング技術の最前線が共有された。展示・ポスターセッションやインターラクティブセッションでは,登壇者や参加企業との交流も盛んに行なわれ,技術者同士の情報交換の場としても有意義な一日となった。

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