ABCら,褐色矮星の伴星を地上と宇宙望遠鏡の連携で発見

著者: 編集部

アストロバイオロジーセンター(ABC),米カリフォルニア州立大学ノースリッジ校,米ジョンズホプキンス大学は,地球から約55光年離れたM型星LSPM J1446+4633(J1446)を周回する,伴星型の褐色矮星J1446Bを直接撮像で発見したと発表した(ニュースリリース)。

太陽より小さく冷たい「M型星(赤色矮星)」は,銀河系の恒星の過半数を占めるとされており,星・惑星形成進化の研究において重要なターゲットとなる。M型星は近傍の天体でも非常に暗いため,これまで詳細な観測はあまり行なわれていなかったため,M型星まわりの伴星や惑星の統計は未解決の問題となっている。しかし,近年では観測技術の発展に伴い,褐色矮星や低質量星を伴うケースが過小評価されていた可能性も指摘されている。

研究グループは,すばる望遠鏡の赤外線分光観測モニタリングによる視線速度測定,ケック望遠鏡による高解像度赤外線撮像,そしてガイア衛星による精密な位置測定を利用したJ1446の天球面上での加速度測定の3つの異なる手法を組み合わせて観測を行なった。これらの観測量を組み合わせてケプラーの法則を利用した解析を行なうことで,J1446系の力学的質量とJ1446Bの軌道を精密に決定した。

視線速度の観測だけでは質量と軌道傾斜角のパラメータが縮退しているため不確定性が残るが,直接撮像とガイアのデータを加えることでその問題を解消でき,軌道を精密に求めることができた。特に視線速度観測は,すばる望遠鏡に搭載された赤外線高分散分光装置IRDを用いた戦略枠プログラム(IRD-SSP)におけるモニタリング観測中に得られたデータが不可欠であった。ケック望遠鏡では地球大気による星像の歪みを高度に補正するピラミッド波面センシング技術を用いた補償光学装置が今回の直接撮像検出に大きく貢献したという。

また,ヒッパルコス衛星とガイア衛星の位置天文データを利用した星の加速度情報と系外惑星の直接撮像を組み合わせて新規天体を検出,さらに質量を精密に制限する手法はこれまでにも確立されていたが,この研究では,過去のヒッパルコス衛星ではほとんど検出できなかった暗い赤色矮星に対し,より暗い天体の位置まで精密測定できるガイア衛星のみの加速度情報を伴星軌道フィッティングに適用させて,伴星の軌道や力学的質量を精密に制限する事に成功した初めての褐色矮星伴星となるという。

今回の発見は,褐色矮星の形成シナリオを検証するための重要なベンチマークになるとしている。地上望遠鏡と宇宙望遠鏡の協力が,太陽系外に広がる未知の世界の解明に強力な手段となることと期待されている。

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