理化学研究所と東京大学は、光を用いた量子コンピューターで「誤りに強い計算」が可能であることを示した(ニュースリリース)。
量子コンピューターを実現するためのハードウェアとして、さまざまな物理系が候補に挙がっているが、光はその中でも通信技術と高い親和性を持つため、将来的な大規模化に向いていると期待されている。特に光の振幅に量子ビットを保持する光連続量方式では、量子コンピューターを実現する上で不可欠な「量子もつれ」を比較的容易な光学操作で実現できることが注目されている。しかしその反面、光連続量方式はノイズの影響を理論的に扱うことが難しく、誤り耐性の確立が大きな課題であった。実際、これまでの理論研究では、光振幅が確率的な変位を受けるという非常に限定的で理想化されたノイズに対してしか誤り耐性が示されていなかった。
この研究は、光連続量方式の量子計算の実行中に生じ得る一般的なノイズに対して、そのノイズが光振幅に保持している量子ビットにどのような影響を与え得るかを数学的に解析した。それにより、光の量子状態の周期的な構造を簡潔に表せる表現空間を用いて解析することで、光に生じるノイズが空間的、時間的に強い相関を持たないという制約を満たしていれば、そのノイズを量子ビットに生じる「誤り」に翻訳できることが判明。さらに、これらの量子ビットに生じる「誤り」は、これまで量子計算の研究分野で研究されてきた量子誤り訂正符号で訂正することができることが明らかとなった。
それにより、光振幅に保持する量子ビットに既存の量子誤り訂正符号を組み合わせることで、光に生じたノイズが大きすぎなければ、原理的には打ち消し可能であり、その際、打ち消し可能であるノイズに保つためには光振幅が無制限に大きくならない、つまり光の持つエネルギーが大きくなりすぎない設計が必要であることも判明した。
現実の光学操作の過程で生じる典型的なノイズは、空間的、時間的に強い相関を持たないため、これまでの理論研究が仮定していた限定的で過度に理想化された条件を乗り越え、より現実的な条件の下で誤り耐性光量子計算が可能であることが理論的に示された。
この研究は、どのようなノイズをどの程度抑えれば安定動作するかが不明瞭であった光連続量方式の量子コンピューターについて、クリアすべき技術の要件、ノイズの小ささといった実験に必要な指針を理論的に明らかにしたことに意義があるという。この理論的な成果によって、光量子技術の追究を進めた先に誤りに強い光量子コンピューターの実現があることが保証された。さらに、実用的な光量子コンピューターの実現のために今後研究・開発が必要となる技術がより明確化されたことで、光量子コンピューターの実現に向けてさらに一歩前進したとしている。
今後はこうした量子誤り訂正理論の基礎研究の積み重ねとともに、量子コンピューターの性質をうまく活用したアルゴリズムの研究も両輪として進めていくことが重要になる。このような両輪の研究活動の進展によって量子コンピューターが実現されることで、新材料開発や機械学習などの応用分野の研究が加速し、社会の幅広い領域で技術革新が起きることが期待されるとしている。




