大阪大学(阪大)の研究グループは、典型元素である有機ガリウム種が光照射によって遷移金属のような2電子酸化還元反応を示すことを明らかにした(ニュースリリース)。
遷移金属は、d軌道を利用して電子を可逆的にやりとりできるため、酸化還元を伴う化学変換の触媒として利用されてきた。一方で、アルミニウムやガリウムなどの典型元素はd軌道が反応に関与しないため、これまで酸化還元反応を有機合成へ応用することは困難と考えられてきた。例えば、13族元素である1価ガリウム種は、σ結合やπ結合と反応して2電子酸化により安定な3価ガリウム種へと変化する。一方、その逆反応(還元過程)は熱力学的に不利であり、通常は進行しない。
近年、持続可能な化学プロセスの実現に向けて、希少で高価な遷移金属に代わる、典型元素を用いた触媒反応の開発が強く求められている。研究グループはこの課題に対し、典型元素でも可逆的な酸化還元を実現する新しい手法として、「光」と「レドックス活性配位子」に着目した。
研究グループは、電子を一時的に受け渡しできる構造を持つフェナレニル型配位子を導入した1価の有機ガリウム種を開発した。フェナレニル型配位子は、電子の授受が容易でかつ可視光を吸収できる特性を持つため、光によって電子移動を誘起することが可能。この1価ガリウム種は、1,3-ジエンと反応して環状の3価ガリウム種を与えるが、青色LED光を照射すると、ガリウム–炭素結合が可逆的に切断され、1価ガリウム種が再生することが明らかになった。
さらに、イソシアニド存在下ではこの結合切断過程を利用してイソシアニドが挿入反応を起こし、二重挿入体からは1,2-フェニレンジアミン骨格が生成されることを発見した。この反応は、一般的な(2+2+2)型や(4+2)型とは異なり、可視光駆動による(4+1+1)環化付加反応として位置付けられ、ガリウムの2電子酸化還元反応を有機合成へと応用した初の例となる。
ガリウムの酸化還元を光で制御し、有機合成反応に応用できることを初めて示したことにより、これまで遷移金属や14、15族元素に限定されていた酸化還元化学の概念を、13族元素にまで拡張した。さらに、可視光照射という温和で環境負荷の少ない条件下で反応が進行することから、持続可能な触媒設計や光エネルギーを活用した新しい有機合成法の開発につながる可能性があるという。特に、希少金属資源への依存を低減し、典型元素を活用する反応プロセスの実現に向けた重要な成果だとしている。
