島根大学,広島大学,弘前大学,高エネルギー加速器研究機構,東北大学は,金属ガラスに液体窒素温度と室温の間を繰り返して上下させる「極低温若返り効果」を起こすことで電子状態が変化することを,放射光を用いた実験で明らかにした(ニュースリリース)。
エネルギー的に低い安定な緩和状態のガラスに外部からの刺激を与え続けエネルギー的に高い状態へと戻すことを若返り効果と呼ぶ。最近,温度の上下を繰り返すことで若返り効果があることが知られるようになった。
この現象は通常,液体窒素の低温と室温を繰り返すことによって実験的に検討されるので,「極低温若返り」効果と呼ぶ。極低温若返り効果によってミクロな原子配列や振動状態の変化があることは分かったが,それが電子状態の変化にも影響するかを探索することは,行なわれていなかった。
この研究では,原子配列や弾性的性質に不均質性が大きいとされるGd65Co35金属ガラスを対象とした。高温の液体試料を銅製水冷ロールに吹き付けてリボン状の金属ガラスを作製し,液体窒素と室温エタノールに交互に浸す処理を40回繰り返すことで極低温若返り効果を与えた。放射光を用いた光電子分光,逆光電子分光,軟X線吸収分光,軟X線発光分光により電子状態を軌道別に観測した。
その結果,光電子分光スペクトルにおいて,若返り後は入射光エネルギー60eV以下で-5eV付近のピーク強度が減少し,Co3d状態が大きく変化していることが示された。この変化はCo2p-3d励起による軟X線発光スペクトルにおいても確認され,Co3d部分DOSの減少を証明するもの。さらに逆光電子分光では低エネルギーピークが約1eV低エネルギー側にシフトし,対応する軟X線吸収スペクトルでも同様のシフトが見られ,Co3d部分の空電子状態が変化したことが分かった。
一方,Gd 4p-4dおよび4d-4f励起による軟X線吸収スペクトルには有意な変化が認められず,若返り効果は主としてCo原子の電子状態に影響することが明らかとなった。以上より,若返りによってCo原子がGd原子から離れる原子配列変化が電子状態変化として対応することが確認された。
この研究の成果は,ガラスはそのミクロな構造,弾性不均質性,および電子状態がその熱履歴によって大きく変化する若返り現象を起こすものであるという,結晶物質では全くあり得ないことを実験的に明らかにしたもの。このことはランダム系の科学に新しい見地を提示するとしている。




