愛媛大ら,ブラックホールX線連星の観測結果を発表

愛媛大学,福岡教育大学,ミシガン大学は,2023年に打ち上げられたX線分光撮像衛星XRISM(クリズム)による,天の川銀河にあるブラックホールX線連星4U 1630-472の観測結果を発表した(ニュースリリース)。

ブラックホールX線連星は,太陽の数倍から数十倍程度のブラックホールと太陽のような通常の恒星がペアを組み,お互いの周囲を回り合う連星系となっている。また,宇宙に存在するブラックホールの中でも,特に活動的で劇的な変化を示すことで知られている。

こうした活動的なブラックホールから周囲に放たれる強い電磁波やガスは,周囲の環境に大きな影響を及ぼしている可能性がある。研究グループは,XRISMが本格観測を開始した直後の2024年2月16日から17日に,2年に1度ほど増光を引き起こすことが知られているブラックホールX線連星4U1630-472を,およそ25時間にわたって観測した。

XRISM以外の広い視野を持つX線観測装置を使って,天体が暗くなってXRISMではとらえられなくなる前に,タイミングよく観測を実施。これまでで最も「暗い」状態における観測に成功した。その結果,XRISMに搭載された軟X線分光装置Resolveにより高電離の鉄による吸収線を検出することができた。

詳しい解析の結果,吸収線の原因となっている電離ガスは,降着円盤の外側部分に位置していることがわかった。このガスの速度はおよそ秒速200km以下であり,過去の明るい時期に観測された高速のウインドに比べて数分の1以下の非常に遅い速度であることがわかった。

これらのガスは,やがてブラックホールに向かって落ちるか,あるいはウインドとなって宇宙空間に広がっていくかもしれず,今後のブラックホールのダイナミックな活動を理解するための重要な情報だとしている。

今回観測された主要な吸収線から推定すると,高温ガスはウインドとして連星系の外へ噴き出してはいないことがわかった。一方,今回より明るい時期には,およそ1000km/sのスピードで噴き出すウインドが観測されている。

研究グループは,X線光度や降着円盤のガスの状態がどのような条件を満たすときに,ガスが加速されて高速のウインドが噴き出すのか,またどのくらいのガスやエネルギーが宇宙空間にまき散らされるのかを明らかにすることが,次なる大きな目標だとしている。

キーワード:

関連記事

  • 核融合・光電融合・量子・宇宙、次世代成長市場の技術が集結 Photonics Innovation 2026開催

    次世代エネルギーとして期待される核融合、AIインフラの進化を支える光電融合、実用化に向けた開発が進む量子コンピューター、そして民間企業の参入が相次ぐ宇宙ビジネス。いずれも将来の成長市場として投資家の関心を集める分野であり…

    2026.10.28
  • カバーガラスブランドStarveil™の新製品「BDX-3」

    日本電気硝子、宇宙用超薄板カバーガラス「BDX-3」を開発 波長300nmの透過率を0.1%に減

    日本電気硝子は、宇宙用超薄板カバーガラス「Starveil(スターベイル)」の新製品「BDX-3」を開発し、有償サンプルの販売を開始した(ニュースリリース)。放射線による着色を抑えるとともに、従来品「BDX-2」と比較し…

    2026.10.23
  • ノーベル賞2026を光技術と材料から振り返る 光遺伝学、IceCube、分子の「右と左」

    2026年のノーベル賞は、生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学3賞が出そろった。研究対象は脳、宇宙、化学反応とそれぞれ異なるものだったが、光技術という側面から眺めると興味深い共通点が見えてくる。光は、生命現象を操作…

    2026.10.07
  • 島津製作所、JAXA基金で量子スピン磁力計の開発に参画

    島津製作所は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金事業に採択された研究開発拠点「宇宙転用・新産業シーズ創出拠点“SX-CRANE”」に、代表機関である東京科学大の連携機関として参画する(ニュースリリース)。 S…

    2026.07.22
  • Orbital Lasers、宇宙用レーザー技術を活用した衛星LiDAR事業を紹介【光・レーザー関西2026】

    特別企画「航空・宇宙×光」ゾーンに出展しているOrbital Lasersは、宇宙用レーザー技術を活用したスペースデブリ(宇宙ごみ)除去と、衛星LiDARによる地球観測の取り組みを紹介している。 同社の技術開発は、スカパ…

    2026.07.16

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア