NTTは,従来の光通信波長帯を超えた新たな超長波長帯(X帯)を開拓し,波長帯域27THzの超広帯域波長分割多重(WDM)信号によって,伝送容量160Tb/sでの伝送距離1,040kmの長距離大容量光伝送の実証に成功した(ニュースリリース)。
拡張した波長帯を用いた大容量かつ長距離の光伝送の実現には,波長帯に対応した光増幅中継器が必要になる。NTTではPPLN導波路型OPAを用いた波長帯変換技術を利用し,U帯などの新規帯域とC帯やL帯の従来帯域との間で相互に波長多重信号を一括変換することで,従来帯域用の光増幅器であるEDFAを新規波長帯の光増幅に利用するシステム構成の実証を進めてきた。
今回,L帯とU帯の間の相互変換用に試作したPPLN導波路の制御状態を変更し,変換帯域をX帯まで広帯域化することで、U+X帯とC+L帯のWDM信号を相互に一括変換する波長帯変換器を構築した。また,S帯とC+L帯の間を変換する波長帯変換器も新たに試作し,これらと既存の光増幅器であるEDFAを組み合わせることで,S帯からX帯をカバーし27THz帯域の波長多重信号を一括増幅する光増幅中継器を実現した。
光通信において最も長い1,625nmから1,675nmまでのU帯より長い波長帯では,石英系光ファイバの吸収特性により急激に伝送損失が増加する。一方で,広帯域な波長多重信号を光ファイバ上で伝送すると,誘導ラマン散乱と呼ばれる非線形作用により,短い波長の信号から長い波長の信号へ光のパワーが遷移し,光ファイバの伝送損失の波長依存性が実効的に変動する現象が起こる。
この現象を,チャネル間誘導ラマン散乱(ISRS)と呼ぶ。このISRSを積極的に利用することで,従来の波長帯であるC帯とL帯から光パワーを遷移させ,U帯よりも長い波長の帯域を実効的に低損失化することで,信号伝送に利用することを提案した。
今回,U帯とX帯に加え,短波長帯であるS帯も利用し,従来波長帯であるC帯とL帯も加えた27THzの信号を送信した。数値シミュレーションによって実験条件の最適化を行なった結果,ISRSの効果により,長波長帯であるX帯は大きく低損失化され,高速信号伝送に利用することが可能となった。
これらにより,既存光ファイバを用いた1,000km級の伝送実験として世界最大容量となる160Tb/sの超大容量伝送を実証し,大容量化および長距離化を両立可能な領域を拡大した。同社では,敷設済みのシステムにおいても大幅な大容量化が期待される成果だとしている。




