東大,世界初LED光でミニトマトの安定生産に成功

東京大学の研究グループは,太陽光が必須とされてきたトマト栽培の常識を覆し,LED光だけで高品質ミニトマトの長期・安定生産に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

LED植物工場ではこれまで,光要求の低いレタスなどが中心に栽培されてきた。しかし近年,都市化や気候変動により,都市空間で高付加価値作物を安定的に生産するニーズが高まっている。甘味やうま味,リコピンを蓄えるトマトは強い光を好むため,LEDでは育たないとされてきた。

研究グループは,その常識を覆し,LEDのみで高品質トマトを育てる技術開発に挑んだ。トマトには安定した光と温度が不可欠。温室では環境が日々変動するが,LED植物工場では一年中ほぼ一定に保てる。特にS字栽培では光が均等に届くため,株全体が効率的に光合成できる構造を実現した。

葉の光合成は,成長や果実の甘味・栄養の源。光合成活性(ETR)を測定すると,温室やI字栽培では上葉のみが活発なのに対し,S字栽培では上下の葉が均等に働いていた。これは光が均等に当たるため。

またS字栽培では,株は節間が短く茎が太いずんぐり型となり,クロロフィル量(SPAD値)も高く,省スペースでもしっかり実をつける都市・宇宙向けの理想的な形だった。

収量はどの栽培法でも大きな差はなかったが,S字栽培は収穫までの期間が最も短く,効率的に収穫できた。果実は小粒ながら赤みが濃く,果実の締まりも良好だった。

味ではS字栽培が最も糖度が高く(Brix値;:8.5%),酸味が低いため糖酸比が最大となり,コクのある味わいを実現した。さらにリコピンは約5%,ビタミンCは約7%温室より多く,栄養面でも優れていた。アミノ酸比較では,温室トマトにうま味成分(GABA,グルタミン酸など)がやや多く含まれる傾向が見られた。

温室は天候に左右され,光や温度が不安定な一方,植物工場では空調とLEDにより環境が安定している。それにより,栽培期間が短縮され,糖度が約15%,ビタミンCが約7%,リコピンが約5%増加するなど,品質が向上した。

I字栽培でも温室を超える品質は可能だが,光ムラにより果実サイズや糖酸比に限界がある。S字栽培は株全体が均等に光合成できるため,コクのある味,収穫のスピード,省スペースという点で最も優れた栽培法となっている。

研究グループは,この成果は,都市部の限られた空間での食料自給や,将来的な宇宙農業における果菜類の安定供給の実現に向け,大きな一歩となるものだとしている。

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