東京慈恵会医科大学らの研究グループは,1枚の組織切片上から120種類以上のタンパク質を高解像度に可視化し,空間的に統合解析できる世界初の技術「PathoPlex」を開発した(ニュースリリース)。
マルチプレックスイメージングは,1つの組織切片で同時に観察できるタンパク質の数を,従来の限界から大幅に拡張する。装置にはさまざまな種類があるが,顕微鏡ベースの手法では,DNAと結合させた抗体や蛍光抗体を使用し,複数回にわたって撮影を繰り返すことで,比較的簡便に高精度な解析を行なえる。
2018年には,「4i」という,より柔軟性の高いマルチプレックスイメージング手法が登場した。この方法では,41種類の抗体を用いて,細胞内の複雑な構造変化をピクセル単位で検出することが可能となった。しかし,この4iを多様な細胞から構成される組織に適用し,十分な情報量と解像度を両立した解析を行なった研究は限られている。
こうした背景を踏まえ,研究グループは,4iの考え方を発展させ,「PathoPlex」という新たな画像解析フレームワークを開発した。PathoPlexは高解像度のマルチプレックスイメージングと,オープンソースソフトウェアによる高度な情報解析を組み合わせた手法であり,1枚の組織切片上から120種類以上のタンパク質を可視化・解析できる。
大規模データを効率的に解析するため,研究グループは「spatiomic」という空間プロテオミクス用の高速計算ライブラリを開発した。これによりマーカーごとの画像を正確に位置合わせし,ピクセルレベルでのクラスタリング解析を行なうことができ,タンパク質の共発現パターンを空間的に可視化することが可能となる。
得られた各クラスターは,細胞や組織における特定の機能的な状態を反映している可能性があり,それぞれのマーカーの寄与度や発現変化を統計的に解析することで,生物学的な意味づけを行なった。さらに,各クラスターの量的変化は,タンパク質の発現レベルの違いだけでなく,細胞内での局在の変化にも関係していることが示唆された。
PathoPlexの有用性は,3つの異なる臓器を対象とした検証実験(160nmの解像度,使用マーカー数は30未満)により確認し,腎臓の詳細な解析により,その有用性を裏付けた。病態のごく初期段階や薬剤の影響によるタンパク質発現パターンの変化を捉える手法としての有用性も示された。
研究グループは,市販の抗体と一般的な蛍光顕微鏡で導入できるため,さまざまな研究施設で幅広く利用が期待されるとしている。




