OKIとNTTイノベーティブデバイスは,結晶薄膜を剥離し,異なる材料の基板やウエハーに異種材料接合するOKI独自の技術であるCFB(Crystal Film Bonding)技術を用いて,InP系UTC-PD(単一走行キャリア・フォトダイオード)を放熱性に優れたSiC上に異種材料接合することにより,接合歩留まりを向上させ,高出力テラヘルツデバイスの量産技術を確立した(ニュースリリース)。
テラヘルツ波は,非破壊検査やセキュリティ,さらには次世代ワイヤレス通信などへの応用が期待される電磁波であり,その利用には高出力なデバイスの開発と量産性の両立が課題となっている。
こうした課題にNTTデバイスは,超高速・高出力動作が可能なInP系UTC-PDに二波長の光を入射することでテラヘルツ波を発生させるフォトミキシング素子の改良も進めてきた。特に,ワイヤレス通信で標準的な多値変調信号を長距離伝搬させるためには,多値変調光通信信号をテラヘルツ信号に変換する際にリニアリティを維持しつつ高出力化を図ることが重要であり,フォトミキシング動作における1dB飽和出力を高くすることが求められている。
この高い1dB飽和出力値を実現するために,大阪大学,九州大学,東京大学とNTTデバイスから構成された研究グループは,放熱性に優れるSiC基板への直接接合に注目した。従来はInPとSiCをウエハー全面で接合していたが,この方式は歩留まりが低く,不要な結晶の除去も必要だった。
OKIは,CFB技術を用いて,必要なInP系結晶薄膜だけを素子レベルで分割・選別し,SiCウエハーに選択的に高精度接合することに成功した。これにより,歩留まりは従来の約50%からほぼ100%に向上し,材料の無駄も大幅に削減された。
さらに,素子レベルで結晶薄膜を分割した後に,素子を選択的に接合することで,従来プロセスでは除去していた結晶薄膜も有効活用できるようになった。
CFB技術で結晶薄膜が接合されたSiCウエハーに対して,NTTデバイスが製造したUTC-PDチップは1mW以上の1dB飽和出力と優れたリニアリティを示し,暗電流も従来比1/3に低減されたことから,CFB技術はInP系結晶薄膜の特性を良好に維持したまま接合できることを確認したという。
今後両社は,この共同成果をもとに,テラヘルツデバイスの2026年の量産化を目指し,6G通信技術の商業化や,非破壊センシング技術の広範な活用に焦点を当て,産業界や学術界との連携を強化していくとしている。
