北大ら,CO2と可視光でβ-アミノ酸を高効率合成

北海道大学と静岡大学は,量子化学計算を活用することでCO2を用いた新しいβ-アミノ酸の合成法を設計と実際の化学合成によりその合成法を実証し,この反応を気液フロー合成へと発展させ,連続的かつ高効率なβ-アミノ酸合成を実現した(ニュースリリース)。

近年注目を集めている光電子移動触媒,特にイリジウムやルテニウム触媒は,可視光によって励起され,分子の酸化・還元を促進することで,CO2を利用した持続可能な分子変換への応用が期待されている。しかしながら,これらの酸化・還元の過程は通常の量子化学計算ではコストが大きく,取り扱いが非常に困難だった。

研究グループは,エネルギーシフト法を活用した酸化還元過程の計算を反応開発へと応用した。まず,反応の中間体として想定されるラジカル種について,CO2共存下での還元過程を計算したところ,還元とカルボキシル化が同時に進行することで,β-アミノ酸が生成されることが示唆された。

計算で導かれた反応経路を実現するために,実験では光電子移動触媒であるイリジウム錯体と青色LED 光を用いてアミノアルケンとCO2を反応させ,実際にβ-アミノ酸誘導体が生成されることを確認した。また,低温条件下及び高圧条件下の実験結果から,高濃度のCO2により副反応が抑制され,高収率でβ-アミノ酸が生成されることを明らかにした。

そこで,この反応をフロー合成へと展開するにあたり,研究グループで開発したウルトラファインバブル発生装置を利用することにした。この装置では気体を高圧下で液体に溶かし込み,その圧力を一気に開放することで余剰な気体は粒径1μm未満のウルトラファインバブルとなる。

ウルトラファインバブルは非常に細かい粒子であるため浮力の影響を受けにくく,長時間溶液中にとどまる。また,溶解している気体が反応により消費された場合には直ちに溶解することで,溶液中の気体の濃度を高く保つ効果がある。

この装置を用いた気液フロー反応により,わずか3分で β-アミノ酸を高効率かつ連続的に合成することに成功した。通常のフラスコで行なうバッチ反応のTOFと比較すると,バッチ法ではそのTOFが11min-1であるのに対し,気液フロー法では45min-1となった。この結果から,気液フロー法がβ-アミノ酸の合成において極めて効率的であることが明らかとなった。

研究グループは,この技術を用いた気液フロー合成では,反応時間約3分で高収率を実現しており,持続可能な連続合成法として高い応用性が期待されるとしている。

キーワード:

関連記事

  • ウシオ電機、距離計測向けパルス出力200mWの赤色レーザーダイオードを発売

    ウシオ電機は、測距儀など高精度な距離計測用途に対応した波長685nmの赤色レーザーダイオード(LD)「HL67241MG」を2026年4月より販売開始した(ニュースリリース)。 近年、建設やインフラ整備の現場では、建築測…

    2026.04.14
  • 立教大と東大、金量子ニードルで近赤外光を高輝度な可視光へ変換することに成功

    立教大学と東京大学は、42個の金(Au)原子からなる異方的な形状を持つ金クラスター超原子である「Au量子ニードル」を増感剤として用いることで、エネルギーの低い近赤外(NIR)光を高輝度な可視光(黄色・橙色)へと変換する「…

    2026.02.19
  • 東大、可視光を吸収し2ミリ秒長く発光し続ける分子状の亜鉛化合物を創出

    東京大学の研究グループは、可視光を吸収し、2ミリ秒と長く発光し続ける分子状の亜鉛化合物の合成に成功した(ニュースリリース)。 亜鉛化合物は一般に無色な物質であり、分子の中心に位置する二価の亜鉛は、可視光に対してイノセント…

    2026.02.13
  • 北里大と昭和薬科大、折れ曲がった分子構造を有する新規有機発光色素を設計・開発

    北里大学と昭和薬科大学は、チアントレンをクマリンに融合した折れ曲がった分子構造を有する新規有機発光色素(6,7-BDTC)を設計・開発した(ニュースリリース)。 クマリンは医薬・生体関連分野から光機能性材料に至るまで幅広…

    2026.02.10
  • 早大など、世界最長クラスのキラル発光ヘリセン分子の系統的合成に成功

    早稲田大学と阿南工業高等専門学校は、容易に入手可能な原料から2工程で分子の長さが異なる一連のらせん状低分子有機化合物であるヘリセンを系統的に合成する手法を開発した(ニュースリリース)。 近年、キラルな光である円偏光(CP…

    2026.02.06

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア