
徳島大学と紫光技研は,水銀フリーで,生体への安全性と殺菌効果を両立したプラズマ方式遠紫外線(far-UVC)光源を開発し,その殺菌及びウイルス不活化効果を実証した(ニュースリリース)。
光波長200~230nmのfar-UVCは,一般的な水銀殺菌灯(254nm)よりも生体組織への浸透が浅く,皮膚や眼への障害を抑えつつ,細菌やウイルスを効果的に殺菌・不活化できる。しかし,far-UVC光源は,省エネルギー化,小型・軽量化,及び照度制御の高速化などに課題があり,実用化は限定的だった。
研究グループは,Luminous Array Film(LAFi:ラフィ)技術を活用して,中心波長228nmのfar-UVCを放射するプラズマ光源モジュール「PLM228」を新たに開発した。LAFi技術は,複数の蛍光体を選択・組み合わせることで,発光波長を自由に設計できる。
「PLM228」は平面電極と複数の発光チューブから構成され,ガス放電によって生成された172nmの真空紫外線(VUV)で蛍光体を励起し,far-UVCを外部に放射する。また,発光チューブには200~300nmの紫外線透過帯域を持つガラス素材を採用し,空気中の酸素と反応して有害なオゾンを生成するVUV成分を遮断しつつ,far-UVCのみを安全に外部へ放射できる設計とした。
この「PLM228」のfar-UVCを病原微生物に照射し,その殺菌及びウイルス不活化効果を評価したところ,大腸菌に対して積算照射量4.5mJ/cm2で99.99%の殺菌効果を示した。また,A型インフルエンザウイルスに対しては,3.0mJ/cm2の照射で99.9%の不活化効果を確認した。
さらに、紫外線耐性の高い真菌である黒カビに対する明確な殺菌効果も認められた。この殺菌能力は,従来の低圧水銀ランプや他のfar-UVC光源(Kr-Clエキシマランプ)と比較しても,同等又はそれ以上の効果となったという。
UVCは主に微生物の核酸に損傷を与えることで殺菌効果を発揮するが,far-UVCは核酸に加えて酵素や細胞膜にも作用すると考えられている。「PLM228」は,UVC及びfar-UVCを含む広帯域の発光を有しており,複数の標的に同時に損傷を与えることで,相乗的な殺菌効果が発揮されている可能性があるとする。
「PLM228」は小型・軽量でありながら,消費電力7.2Wに対して264mWの高出力を実現し,高速駆動による照度制御も可能。研究グループは,高い実用性を備えた殺菌光源として,医療機関や畜産施設など感染症対策が求められる現場での応用が期待されるとしている