東北大学,東京大学,京都大学は,海底に敷設された光ファイバケーブルを活用した新しい地下構造のイメージング手法を確立した(ニュースリリース)。
海底の地下構造を調べるには,地震波が地中をどのように進むか(地震波速度)を知ることが重要。これにより,地震の仕組みを理解したり,石油・天然ガス・メタンハイドレートといった資源の探査,さらには二酸化炭素を地下に閉じ込めるCCSの安全性評価にも役立つ。
従来はエアガンで人工的に地震波を発生させ,波の伝わり方を調べる,屈折法地震探査が用いられてきたが,センサーの数が限られるため,高精度な解析には限界があった。そこで近年注目されているのが,DAS(分布型音響センサ)という技術。これは海底に敷設された光ファイバケーブルを数メートルごとに感知点とし,非常に高密度な観測を可能にする。
研究グループは,今回岩手県三陸沖に設置された,データ通信に使用されていない光ファイバを利用して,エアガンで発生させた地震波をDASで捉える実験を行ない,地中を伝わる屈折波の観測に成功した。
取得したデータに,τ-sumインバージョン法を適用し,地下のP波速度構造を高解像度で推定した結果,3つの異なる地層が存在し,それぞれで地震波の速度や層の厚さが変化することが明らかになった。たとえば,最上層は1.65~1.9km/sの速度を持ち,厚さも250mから1.2kmへと変化した。
さらに反射法地震探査によって得られた断面図と比較した。その結果,DASのデータから得られた地震波速度構造の変化の位置と,反射法で観測された構造の境目の位置は,よく一致していることがわかった。
つまり,DASを使って作成した地下構造のモデルは,非常に高い分解能を有しており,正確に地層の空間変化をとらえられている,ということが確認できた。
研究グループは,この手法は,海底下の構造モニタリングや資源探査,地球科学的な研究の理解への応用が期待されているとしている。