NAISTら,高移動度/低抵抗酸化物半導体ナノシート開発

奈良先端科学技術大学院大学(NAIST),東京科学大学,出光興産は,原子層堆積(ALD)法を用いることで高性能かつ高機能な多結晶酸化物半導体 Ga 添加 In2O3(poly-IGO)ナノシートとそれをチャネル層に用いた電界効果トランジスタ(FET)の開発に成功した(ニュースリリース)。

In2O3,ZnO,In-Ga-Zn-Oなどの酸化物半導体は,比較的低温でも高い性能が得られ,漏れ電流が小さい特長を持っており,従来のディスプレー分野だけではなく次世代半導体デバイスの有力材料として注目されている。

しかし,一般的な非晶質構造を持つ酸化物半導体では膜厚を薄くすると電子移動度が低下してしまい FETの性能が十分に発揮できない課題もあり,より高性能を発揮できる材料への技術要求があった。

ALD法を用いたIGO薄膜はInOx層とGaOx層の原子層レベルで交互に積み重ねていくことで合成することができる。成膜中のGaOx層の成長割合を増やすと結晶の格子定数が減少し,In2O3結晶中のInの一部がGaに置き換わっていることが確認された。

この結果はInOx層とGaOx層が結晶化する時に互いに混ざり合っていることを示しており,均一なpoly-IGO薄膜を合成することに成功した。この薄膜は約5nmという極めて薄い状態でも完全に結晶化しており,高品質なナノシートが実現できた。

poly-IGOナノシートを用いて試作したFETは,真性電界効果移動度114cm2/Vs,サブスレッショルドスイング76mV/decadeという高性能を示した。この真性電界効果移動度の値は従来材料の5~10倍以上の値。また,チャネル膜厚を3nmまで薄くしても,100cm2/Vs以上の高い真性電界効果移動度が維持されており,微細な半導体デバイスにも対応可能となっている。

さらに,チャネル膜厚と作製プロセスを最適化することによって,122cm2/Vsという世界最高レベルの真性電界効果移動度と10-7Ωcm2台の低い接触抵抗率も実現した。他の報告例と比較したところ,今回の研究のpoly-IGOは5nm以下という極薄膜のナノシート領域でも高い性能を保てること,そしてBEOL応用を想定した450℃以下の低温プロセスで作製可能な点が大きな強みであることが分かった。

研究グループは,この技術は半導体デバイスの更なる高性能化・高集積化・低消費電力化に寄与するものであり,次世代半導体チップやメモリデバイスの実用化に向けた重要なステップになることが期待されるとしている。

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