東北大ら,レーザーによるロケット打ち上げを実証

東北大学と大阪公立大学は,独自に開発した「複数放物面レーザー推進機」の打ち上げ実験を行ない,繰り返しパルスレーザーの照射により,機体全長約15mmの約7倍の高度110mmまで自由飛行させることに成功した(ニュースリリース)。

地上からロケットにレーザーを照射して推進力を与える「レーザー推進」は,燃料を搭載せずに打ち上げ可能だが,機体の姿勢を制御し,長時間の安定飛行を維持する技術が求められていた。

今回,機体のメインボディにスパイクノズル形状のミラーを取り付け,機体に照射されたレーザーを,メインボディ周りに円環状に集光できる設計とした。また,円環状の集光領域を覆うようにリング状の部品(カウル)を取り付けた。

この構造により,機体が飛行中にレーザーの照射軸から横にずれた場合,レーザーがカウルの内側に不均一に集光されるようになる。すると,レーザーによる加熱で生成される衝撃波に不均一が生じ,衝撃波がカウルを押す力にも偏りが発生する。この非対称な力の働きによって,機体は自然に元の中心軸(レーザー軸)へと引き戻される方向に動き,積極的な制御をしなくても姿勢が自動的に補正されるようになる。

加えて,機体軸上には放物面ミラーを取り付け,機体軸がレーザーの照射軸から傾いた際には,放物面ミラー内でのレーザー集光位置が変化し,それに伴って発生する衝撃波の形が変わることで,角度のずれを打ち消せる「複数放物面レーザー推進機」により,受動的制御を実現した。

実験では1ショットあたり約5Jのレーザーを50Hzで繰り返し照射した結果,重量約2gの機体が機体全長約15mmの7倍程度の高度110mmまで浮き上がり,自由飛行と受動的制御の実験的実証にも成功した。

しかし,受動的制御だけでは安定飛行の確実性に欠くことが示唆されたため,能動的制御である,ロケットの動きをリアルタイムで追尾しながらレーザーを照射する「レーザートラッキングシステム」も開発した。これはステレオカメラを用いて,空間内の機体の位置と速度をリアルタイムで取得し,モーター,ベルト式アクチュエータ,ミラーから構成されるレーザー走査システムでレーザー照射位置を制御するもの。

その結果,自由飛行時に想定される機体移動速度程度であれば,レーザーを十分に正確に追尾させることができ,衝撃波と推力を継続的に発生させられることを初めて実証した。研究グループは,より高出力の繰り返しパルスレーザーを用い,高度100 km以上の宇宙空間到達を目指すとしている。

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