東京科学大学の研究グループは,室内などで照明のある明所と,照明のない暗所の両方に対応し,自動的に複数のIoT端末に電力を供給可能な光無線給電(OWPT)システムを開発した(ニュースリリース)。
近年,IoT(Internet of Things)の活用の広がりに伴い,柔軟かつ持続的な電力供給のニーズが急速に高まっている。研究グループは今回の研究で,LEDを用いた光無線給電(OWPT)において,明所だけでなく暗所でも高精度な位置検出と電力供給の切り替えが可能な自動・適応型システムを開発した。
開発したOWPTシステムでは,照明がある明所はRGBカメラと深層学習を用いた画像認識により受電パネルを検出する。一方暗所では,赤外線投光と,受電パネルに取り付けたレトロリフレクター(反射材)を用いた赤外線画像処理によって,受電対象を高精度に検知・追跡する。さらにこのシステムでは,焦点可変型の液体レンズと,光ビームを2次元方向に狙うビーム走査機構,RGBカメラと赤外線深度カメラによる画像検出を組み合わせることで,距離や受電装置サイズに応じて光照射スポットの大きさを自動調整しながら,受電装置の追跡と正確な電力供給をおこなうことが可能となっている。
このシステムで,最大5m先の複数の受電パネルへの電力供給をおこなったところ,自動で順次電力を供給し,照明環境の変化にも瞬時に追従することが確認できた。なお,今回利用したLEDの光出力は1.53Wであり,この場合の受電電力は最大90mWとなった。
LED光源を用いるOWPTシステムは,スマートホームや工場,農場など,多様な分野での実用化が期待されている。さらに今回の成果により,照明の有無や周囲の環境変化に関係なく,自動で複数のIoT端末に電力を供給できる無線給電インフラの構築が現実のものとなる。今回開発した技術は,エネルギーの効率的利用と持続可能なIoT社会の実現に貢献する,次世代の電力供給技術として注目されるという。
今後は,さらに長距離への対応や高効率化に向けた光学系の改良,レーザービームを併用する仕組みなどにより,広範なIoT機器への対応を目指すとしている。また,現行の屋内向け設計から,屋外環境やロボット,AGV,自動運転車などの移動体への拡張も視野に入れており,スマートシティや次世代物流,農業分野への波及効果も期待されるという。
将来的には,インフラ一体型の照明・通信・給電統合システムとして発展させることで,バッテリーに依存しないIoT社会の構築に大きく貢献し,さらにシステムの小型化・モジュール化を通じて,家庭用製品や商用施設への展開も加速していくとしている。




