NTTと三菱重工,レーザー無線給電で効率15%を達成

NTTと三菱重工業は,レーザー光を用いて1km先にワイヤレスでエネルギーを供給する光無線給電実験で,光パワー1kWのレーザー光を照射し,1km先で152Wの電力を得ることに成功した(ニュースリリース)。

一般にレーザー無線給電技術は効率が低く,実用化に向けて効率向上が課題となっている。その要因の一つとして,特に大気中など,長距離レーザー光が伝搬すると,強度分布が不均一となり,光電変換素子でレーザー光を電力に変換する際の効率が低くなってしまうことが挙げられる。

そこで今回,NTTの持つビーム整形技術と,三菱重工の持つ受光技術を組み合わせ,レーザー無線給電の高効率化を図った。

光電変換効率を向上させるためには,光電変換素子に照射するビームの強度分布を均一にする必要がある。そこで今回,長距離伝搬後にビームの強度を均一化する「長距離フラットビーム整形技術」を提案した。ビームの外周部分はアキシコンレンズの効果によりリング状のビームとなり,中心部分は凹レンズの効果によりビームが広がるように位相を変調し,伝搬後にリングビームと拡散ビームが重なりあうことで強度が均一になる。

今回の実験では1km先で所望の強度分布となるように設計を最適化し,回折光学素子を用いてビーム整形を実装し,1km先でのビームの強度分布の均一性を向上させた。

また,大気中を伝搬したビームは,大気の揺らぎの影響を受けて強度分布が乱れる。上記のフラットビーム整形技術によって,ある程度ビームの強度分布を均一化できるが,大気の揺らぎが大きい場合,強度の高いスポットが生成されてしまう。

この問題に対処するために,受光パネル手前にビームホモジナイザを設置し,強度の高いスポットを拡散させて受光パネルに均一にビームが照射されるようにした。さらに,受光パネルの各光電変換素子に平準化回路を接続することで,大気の揺らぎによる電流の変動を抑制する「出力電流平準化技術」により,出力の安定化を実現した。

実験では受光パネルから取り出せた電力は平均152Wとなり,効率15%の光無線給電に成功した。この結果は,シリコン製の光電変換素子を用い,かつ,大気の揺らぎの強い環境下での世界最高効率の光無線給電実証だという。また,実験では30分間の連続給電にも成功した。

両社は,これら二つの技術により,従来のビーム整形技術では困難だった数kmオーダの伝送におけるビーム均一化や,屋外環境における出力安定化が可能となり,離島や被災地などの遠隔拠点に対する安定した電力供給の実現が期待されるとしている。

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