東北大学,筑波大学,東京都立大学は,ミリ波ビーム照射によってチューブの中で加速されるロケット「マイクロ波駆動管内加速器」の推力生成実験に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
化学燃料ロケットの打ち上げコスト問題を解決する手段として「マイクロ波ロケット」が注目されており,研究グループは2025年6月に「燃料を使わずトラクターミリ波ビームでロケットに推進力を与える実証実験に成功」している。
しかし一方で,マイクロ波ロケットの実用化には,①姿勢制御の難しさ,②ビームの発散,③繰り返し照射による推力低下,④高高度での大気希薄化による推力低下といった課題があると考えられている。
そこで研究グループは,マイクロ波ロケットをチューブ内で加速させる「マイクロ波駆動管内加速器(MITA)」を提案した。MITA では,前述の各課題の対策として,①ロケットをチューブに入れることで軌道逸脱を防止,②チューブを導波管として利用し,ビームを閉じ込めて伝送,③ビームを前方から照射する「トラクター方式」により回避,④チューブ内に気体を封入することで安定したプラズマ生成を実現の4つの工夫をしている。
MITA機体モデルは,電磁波伝搬・プラズマ移流拡散・衝撃波伝搬を連成解析できる数値計算コードをもとに設計。機体はコーン型で,前方から照射されたミリ波ビームが機体前部の曲面ミラーとチューブ内壁により反射されて後方に集光され,その集光点でプラズマと衝撃波を生成して推進力を得る。
この集光点でプラズマと衝撃波を生成し,機体をビーム源方向に推進させる。曲面ミラーの設計は,レーザー推進の先行研究を参考にした。
チューブと機体は3Dプリンタで製作。反射性を高めるために内面にアルミテープを貼付した。MITAは,研究グループが開発した振り子式の推力測定装置に取り付け,核融合用ジャイロトロンから発振された 28GHz,210kWのミリ波ビームを前方から照射して推力を測定した。
このビームは軸対称のガウス分布(正規分布)を表し,軸中心で最も高いエネルギー密度を有する特性がある。今回は,推力の基本特性を評価するため,ビームは単発(シングルパルス)で照射した。
研究グループは,方位角方向に段差を持つ光学素子である螺旋位相板により,ビームに螺旋状の位相変化を与えることで,光渦ビームを生成したところ,ミリ波帯の光渦ビームによってプラズマが生成できることが世界で初めて示された。
また機体設計の改良により,機体前方でのプラズマ生成が抑制され,機体後方での安定したプラズマ生成に成功した。これにより,ロケットがチューブの中でビーム源方向に向かって加速され,MITAによる推力生成の原理を初めて実証した。
本技術は、地球からの打ち上げのみならず、月など大気のない環境でのロケット打ち上げや、宇宙エレベーターの昇降機への応用も期待されており、将来の宇宙ミッションに資するものと考えられます。




